社会のパラダイムそのものが変化してきている今、企業も個人も、イノベーションは必要で、発想を転換するための情報や機会を提供していくことが大切だと語られる日本フィランソロピー協会 理事長の高橋陽子さん。これまでの活動で変わってきたもの、変わらなかったもの、そしてこれからの活動に対する想いなどお伺いしました。
――これまで活動してきた中で状況や情勢はどの様に変わってきましたか?
毎日の状況は、相変わらず貧乏暇なしですが(笑)。10年単位で振り返ってみると、やはり変わってきたように思います。20年前だと "社会貢献" という単語を使っていると、ちょっと宗教がかった人とか、すごい奇特な人という風に見られて、「変わってるね」「偉いね」と一言で片付けられていました。ボランティアや社会活動は、女、子どもがするものという風潮もありましたし。でも、今や日経新聞に "社会貢献" という言葉が堂々と出て、ビジネスマンが "社会貢献" について普通に話すようになってきました。そういうところからも、大きく変わってきているのを実感しますね。
――企業や組織という面でも変化がありますか?

社会の抱える問題を解決すること】
"社会貢献"という視点で振り返ると、社会の抱える問題を解決することを目的にした"社会的企業" というものがあって、私は常々、それこそがすべての企業の持つ普遍的な創業目的ではないかと思っていました。だから、企業そのものの存続や活動において、社会貢献が目的にないというのは、本来有り得ないわけです。今後は、特別に社会的企業があるのではなく、既存の企業もそういう風になっていかざるを得ないだろうと考えています。また、当初、市民活動的に存在していたNPOも、今後は事業体として成り立っていく必要があるため、こちらも社会的企業に近づいて来るのかなと思っています。
――社会的企業に近づく傾向が見えてきているのですね。
現状の社会の行き詰まりから抜け出すには、自然の中の社会、自然の一部としての人間、という発想を原点としたイノベーションが必要なのです。
――なるほど。この春の大震災や原発事故でも大きな変化があったかと思いますが、いかがでしたか?
この震災での個人と企業の支援は、すごいものがありましたよね。「何か」を動かしたのは確かです。自然の圧倒的な力は、征服どころか逆らうことすらできない。皆、無常を感じたと思います。そして、あの災害を目の当たりにして、放っておけないっていう感情も。ただ、これは一過性となる可能性があるので、今、それをつないでいくことが必要です。それは企業の役割でもありますし、私共も同様に、常に情報や機会を顕在化させていくことを心がけています。
――機会を提供しても、それに関心を持って貰うのは難しいですよね。

と感じるのは嬉しいですよね】
そうですね。機会を提供するだけではなく、それに関心を持って貰えるように知恵を絞る必要がありますね。 ポイントの一つに、カウンセリングでよく使われる 「内的準拠枠(内的照合枠)」 というのがあります。例えば、絵が好きな人や色に強く反応する人に対して、音楽的なことで表現して伝えようとしても、興味を惹かれないでしょう。逆に、音楽が好きな人が相手なら、メロディーとか音楽的な表現を使った方が、より伝わりやすいですし。相手に合わせないと上手くいかないわけです。さらに、コミュニケーション力が必要ですよね。その中でも聞くことは特に重要です。基本的には、「自分は何も分からない」と思っている位が良くて、相手に聞くのが一番です。そして試行錯誤をしつつ、相手に少しでも響いたら、「やったー!」って思うだろうし。それが面白さにつながるし、嬉しいじゃないですか!少し理解し合えた、共感できた、みたいな感じで。 そうした実感の積み重ねで、関心が行動に移っていくのではないでしょうか?
――機会を提供するにあたり、気にかけている事はありますか?
「子どもたち」への機会をもっと提供していきたいと考えています。子ども主体の寄付や募金の活動を広げていきたいと。子どもの頃から社会的な活動に触れていける機会を提供したいと思っています。これには、ずっと思っていた「寄付文化を広げたい」という願いが根本にあります。 これまでに、「まちかどのフィランソロピスト賞」など寄付をした人を顕彰する活動を実施してきました。青少年部門の受賞校を見てみますと、主体的で工夫を凝らした募金活動が全国で散見されました。また、大人はそのような子どもの活動には強く理解を示してくれる、ということが分かりました。そういったことから、これからは子どもたちの募金活動をより一層広げていきたいと思っています。
――子ども主体で近々予定されている活動はありますでしょうか?
年末に神戸で、チャリティー・リレーマラソンをやります(2011年12月24日開催予定)。東日本大震災被災地の中学・高校生を神戸、つまり阪神大震災の被災地に招待して、神戸の中高生と一緒に、リレーマラソンをします。被災地の参加校の子どもたちが、集まった募金を実際に地元でどんなことに使うかを決めていく。子どもたちの助け合う絆を作るきっかけにし、これが募金を核にした子どもたちのネットワークにつながっていって欲しいと思います。
――心がつながるリレーマラソンになるといいですね。ありがとうございました。最後にメッセージなどありましたらお願いします。

社会の抱える問題を解決すること】
まずは経験してみて欲しいと思います。少なくとも情報には触れていて欲しいですね。フィランソロピーとか社会貢献って、ある面ですごく "お得" なんですよ、ということも知っておいて欲しいかな。"お得" という表現は、抵抗あるかもしれませんが。例えば、自分が今まで知らない世界でお友達を作りたいと思っても、すぐには難しいですよね。でもフィランソロピーの活動でなら、割と安心で簡単にそれが可能です。自分の関心のあることに、ちょっと行ってみて、まず寄付をする、とか。あるいは活動組織の会員になってボランティア活動やイベントの情報を貰って、それを足がかりにしてみるとか。 相性のあることなので、ちょっと覗いてみて、合わなければやめれば良いのです。合わなくても、何かそこで違う世界とその情報に触れられる。情報だけでも貰えるのは良いと思いますよ。そうするとそこから面白い、いろんな出会いが出てきますから。世界が広がりますよね。ちょっと活動したり、ちょっとお金を出したりすると色々なつながりや支援の姿が見えてきて、そういった活動に対する安心感も得られる。仲間作りのきっかけにもなる。大きな苦労や時間や出費をせずにそういったものが得られるのはとてもお得でしょう (笑)?まずは経験してみてください。
高橋陽子さんプロフィール
岡山生まれ。1973年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。高校教師を経て、84年上智大学カウンセリング研究所専門カウンセラー養成課程修了、専門カウンセラーの認定を受ける。85年~91年関東学院中学・高校心理カウンセラーとして生徒、教師、父母のカウンセリングに従事。91年より日本フィランソロピー協会。常務理事・事務局長を経て2001年より理事長。月刊誌の発行、各種セミナーの開催、企業のCSRの企画・運営等に携わる。
著書に『フィランソロピー入門』(海南書房)、『60歳からのいきいきボランティア入門』(日本加除出版)など。
決して長くはない時間の中で行われたインタビューでしたが、内容は幅広く、興味深いお話が多数ありました。今回、お読み頂いた内容も十二分に良いものですが、泣く泣くカットする部分もかなりあった事が心残りとなってしまいました。キーワードだけでも上げてみますと、両面性や様々な分断について、私生活主義、パブリックとプライベート、社会責任、お金の使い方、アウトプットの重要性、子ども時代の経験不足、子どもの吸収力と考える力、子どものすごさ、などなど。いつかお伝えできたらと思いつつ今回はここで筆を置くことにします。
by ニフティ「想い伝え隊」有泉、大空、岡本、高沢
関連サイトの紹介
● 公益社団法人 日本フィランソロピー協会
http://www.philanthropy.or.jp/
高橋さんの著書をご紹介します。
【主な著書】
|
フィランソロピー入門 ―社会貢献、そして自分探しの社会参加 |
価格:2,100円(税込) |
|
60歳からのいきいきボランティア ―フィランソロピーの実践 |
価格:2,100円(税込) |
|
社会貢献へようこそ (SA読本) |
価格:1,260円(税込) |
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