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Vol.30 高橋陽子さん(前編) 目指すゴールが遠いからこそ、プロセスを楽しむ。人生はプロセスだから。

高校教師、スクールカウンセラーを経て日本フィランソロピー協会へ。生徒や保護者へのカウンセリングでの経験から、個人の問題と社会的問題の関連性を意識しつつ、その解決のために社会へ働きかけ続けている高橋陽子さん。前編では協会との馴れ初め、そしてご自身の想いについてお伺いしました。

――日本フィランソロピー協会とはどのような団体なのでしょうか?

この団体は、1960年に民主主義の健全な育成を目的に発足しました。第一次安保闘争の国論が賛成・反対で二分していた時代だったので、ジャーナリストたちが中心になって、公正な世論をきちんと作ることが民主主義を健全に育てるのだ、という考えの下で始まりました。当時はテレビもあまり普及していなかったので、政治討論会を全国で開催したり、官僚や政治家に集まってもらい政策論議や勉強会を主催したりする団体でした。私は発足後30年経った1991年にここに来たのですが、テレビも普及したし、時代も変わってきて、方法論も変えなくちゃいけないと言われていた時でした。この時、前の理事長に、フィランソロピーという話をしたんです。そうしたら、理事長が、「まさにフィランソロピーこそ民主主義の原点だ!」と言って、「これからはフィランソロピーの推進をする」という風に組織も変わったんですね。

――”フィランソロピー" という言葉を、分かりやすくご説明頂けますか?

【「フィランソロピー」はギリシャ語の合成語で人間愛・博愛を意味すると語る高橋さん】
【「フィランソロピー」はギリシャ語の合成語で
人間愛・博愛を意味すると語る高橋さん】

一般には、「社会貢献」と訳されていますが、私は "フィランソロピー" を、「誰もが社会の一員として、自分のできることをすることで社会の役に立つことをし足りないところをお互いに支え合うということ」 と定義しています。 貢献する人・支援する人、支援される人、助ける人、助けられる人、固定した関係ではないと思います。人間は皆、障がいを持っていても、子どもでも、年寄りでも、生まれた国がどこでも、生きている限り、"役割" があるということを、子どもたちと接する中で学びました。

――「これからはフィランソロピーで」と決めた背景は?

民主主義には、直接民主主義と間接民主主義があって、日本は間接民主主義ですよね。税金払って選挙して後はお任せ、っていう感じでずっと来ていて、色々ひずみが出て来てしまったんだと思います。なんとなくお任せ主義で、自分さえ良ければいい、という私生活至上主義がはびこり、経済偏重にもなってきた。 そんな様子が少し見えていたので、団体としても方向転換する時期だったんですね。ただ、日本の企業だと、「今日、僕、ちょっとボランティアなので、早めに帰ります」とはなかなか言えないじゃないですか。寄付も、どこに寄付していいか分からない、とか。 となると日本の場合はやはり、ある程度企業が先鞭をつけて、社員を後押しするといった流れが必要だと思いました。また、企業のCSRや社会貢献の後ろには常に個人というものがあり、そこに視点を合わせることが、日本にとってもコミュニティにとっても、個人個人にとっても、大切だと思っています。

――前職で、今のお仕事に関わるようなご経験は?

【子どもたちとの付き合いの中からいろいろなことを学びました】"
【子どもたちとの付き合いの中から
いろいろなことを学びました】

ここに来る前は、横浜にある関東学院の中学高校のスクールカウンセラーをしていて、子どもたちや保護者の方、先生方から相談を受けていました。その当時から、何かあると、母親ばかりが責められるけれど、私は、実際には父親が問題だなってずっと思っていました。さらに言うと、父親自身の問題というよりも、働く企業の価値観が父親に与える影響の大きさが根本にあります。例えば、父親がいくら子どもに「しっかりしろ」「勉強しろ」「自分の夢を持て」と色々言っても、自分が夢もなくしょぼくれていたら、説得力がないですよね。父親自身が、生の自分を出すことで、子どもとの関係が良くなっていったことも実際にありました。 やっぱり企業が変わらないと、学校も家庭もなかなか変わりにくいのかな、と当時から思っていました。
それともう一つは、人間というのは、「自分が役に立っている」「当てにされている」といった実感を持つことが『生きる力』になる、ということなんです。当時は不登校などの課題を抱えている子たちとの接点が多かったんですけど、彼らとの付き合いの中から、そういうことを数多く学びました。

――仕事を変わられても、ご自分の中で変わらないものはありますか?

カウンセラーから全然違う職種へ就くというので、周りからは心配されたりもしましたが、やってみたら、カウンセリングの目的もフィランソロピーの目的も、実は一緒だということに気が付きました。カウンセリングの目的は、問題の解決法を教えてあげるとか、生き方を導いてあげることではなくて、本人が自分で考えて決め、行動する、それに対して伴走しながら助力することです。ちょっと混乱した時に少しほどいてあげたり、整理してあげたりといったことをしていきます。フィランソロピーも同じで、一人一人の方が、自分の人生の中で、自分はこういうことをやろうと考えて動こうとしている時、私たち協会では、その行動をコーディネートしたり情報提供したりといったお手伝いをするのです。アプローチの方法は違うかもしれない、でも目指しているところは一緒なのかなって。 人間はそんなに色んなことはできないから、やっぱり好きなことしかしないのかもしれないですね。

――活動をされる中で充実感や無力感などを抱いた出来事はありますか?

【高橋さんが毎月インタビューを担当されている月刊誌】
【高橋さんが毎月インタビューを
担当されている月刊誌】

無力感はいつも感じていますよ。力不足でなかなか前に進まないなぁ、って。充実感は、企業とNPO、人と人とが結びついていい展開が見えた時など、元気をもらいます。こういう仕事を続けていると、会社の中で社会に対する責任やあり方をお仕事にしてらっしゃる方とお付き合いが生まれますし、私がインタビュアをさせていただいている月刊誌があるのですが、そこでも、社会のために、未来のために働いておられる方のお話を伺えるので、すごく勇気づけられるんですよね。元気をいただけるというか。役得です。

――社会活動を続けるには元気が必要ですよね。

そう、みんな元気で明るいですよね。ただ、気をつけないといけないのは、「これは大事なことなんだから、分からない人は駄目なんだ」っていうのでは駄目です。こうした活動は、まだまだ理解されていないものですから、まず知ってもらい、参加したくなるきっかけや情報を提供することで、一歩を踏み出すための仕掛けが必要です。褒められているうちはまだまだです。面白そうだから、仲間に入りたい、と思ってもらえるように知恵を出さないといけませんね。尤も、ゴールにたどり着くのはすごく先のことだとも思っています。 だからプロセスを楽しまないとやっていられないというのはありますね。そのプロセスの中で、いい仲間と出会い、新たな理解者が増えていくことを実感しながら仕事ができるというのは、とてもありがたく幸せなことだと思っています。

――プロセスを楽しむって、素敵ですね!

【人生はプロセスだから】
【人生はプロセスだから】

そうでしょう!?ただ、その分、収入面はね・・・。それは会社の中でも同じで、会社にお金があっても、こういう社会活動の部門が使えるお金っていうのは、やっぱりかなり少ないですよね。そういう現実っていうのはあります。でも、その中でどう伝えて広げていくかというプロセスに、チャレンジの面白味があるのだと思います。それで、ちょっとでもものごとがいい方向に回っていったり、めげた時には「仲間がいる」と感じられたり。そういうことだと思います。人生はプロセスですから。死ぬ時まで。「人生とは死ぬまでの暇つぶしだ」と言った人もいましたが・・・。ゴールまで、毎日を切に生きることを目指しています。しかも楽しみながら。同じつぶすなら、楽しく、と。

(後編につづく)

高橋陽子さんプロフィール
岡山生まれ。1973年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。高校教師を経て、84年上智大学カウンセリング研究所専門カウンセラー養成課程修了、専門カウンセラーの認定を受ける。85年~91年関東学院中学・高校心理カウンセラーとして生徒、教師、父母のカウンセリングに従事。91年より日本フィランソロピー協会。常務理事・事務局長を経て2001年より理事長。月刊誌の発行、各種セミナーの開催、企業のCSRの企画・運営等に携わる。
著書に『フィランソロピー入門』(海南書房)、『60歳からのいきいきボランティア入門』(日本加除出版)など。

不慣れなインタビュアが投げかける質問にも、気さくに丁寧にお話しして下さった高橋さん。後編は、そんな高橋さんに活動を続けてきて変わってきたもの、変わらないもの、そして今後の活動についてお伺いしていく予定です。

by ニフティ「想い伝え隊」有泉、大空、岡本、高沢

「高橋 洋子」さんからのお知らせ


関連サイトの紹介

● 公益社団法人 日本フィランソロピー協会
http://www.philanthropy.or.jp/

関連書籍の紹介

高橋さんの著書をご紹介します。

フィランソロピー入門―社会貢献、そして自分探しの社会参加 フィランソロピー入門
―社会貢献、そして自分探しの社会参加

価格:2,100円(税込)
ISBN:978-4-75-900210-2
出版社:日本フィランソロピー協会
発行年月:1997/8

60歳からのいきいきボランティア―フィランソロピーの実践 60歳からのいきいきボランティア
―フィランソロピーの実践

価格:2,100円(税込)
ISBN:978-4-81-781203-2
出版社:日本加除出版
発行年月:1999/4

社会貢献へようこそ (SA読本) 社会貢献へようこそ (SA読本)

価格:1,260円(税込)
ISBN:978-4-76-300522-9 ISBN:978-4-18-883325-4
出版社:明治図書出版
発行年月:2010/6

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