国際的に活躍されるジャーナリストの堤未果さん。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件に遭遇されたことがきっかけでジャーナリストの道を選ばれたそうです。そして、その底流には、小学校時代に育まれた文章を書いて発表する喜びと、自分の本が書店に並ぶというピンポイントの夢がありました。
【東日本大地震による被災者・関係者のみなさまへ】
3月11日(金)に発生した三陸沖を震源とする東日本大地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災されたみなさまとそのご家族の方々に心からお見舞いを申し上げます。
情報が錯綜し、被災地の支援・復興および福島原発の状況など先が見えない状況が続いている中、私は特に、これから大人になってゆく子どもたちのことを日々考えずにはいられません。原発の現状を考えただけでも、私たち大人がしてきたことへのツケを背負ってしまう彼らのために今できる最大限のこととは何か。
彼らがこれから出てゆく社会に対して、希望を失わずにいられるように。
残された者の役目は、決してあきらめず、よりよい未来を作るために手を携えることだと信じています。
堤 未果
――最初にお伺いします。堤さんが米国野村證券にお勤めの時に9・11事件を間近で体験されたというのは有名なお話ですが、どのような状況だったのでしょうか?

野村證券の入っていたビルは、まさにニューヨークの国際貿易センタービルの隣でした。2機目の飛行機がぶつかった時にビル全体が震度6くらい揺れたんですが、千人の社員が非常階段に殺到して、20階から1階まで一気に駈け降りたんです。とにかく逃げなきゃいけない、という人間の本能的な恐怖が襲ってきました。外に出ると周りの人はみんな血を流してるし、ガラスは降ってくるし、火災の煙と熱で耐え切れなくなった人間がビルの上から降ってくる・・。私は川の方に必死に逃げて、なんとか助かることができました。
――この体験がジャーナリストへの転身のきっかけだったと伺っていますが。
9・11事件の後、いつ次のテロがあるかわからないという状況の中で、本当に自分がやりたかったことや夢を真剣に考えさせられました。もし、私が1カ月後に死ぬとしたら、その間に何をしたいのだろう?私の「したいことリスト」は何なのだろう?と考えてみた時に、自分はモノを書いてる時が一番幸せだということに気づいたんです。実はフィクションでも演劇でもジャーナリズムでも何でもよかったのかもしれません。私は小学校の頃から「人間を通して世界をみて、そこから感じたことを表現すること」がものすごく好きだったことを思い出して、パッと自分の中で想いがつながったんです。それで、じゃあ今すぐやろう、OLを辞めてモノを書こうって・・。
――あの事件の後、アメリカという国全体が好戦的に変わっていきましたね。堤さんの著書にもありましたが、一般の人も銃を買いに走ったりとか・・。そのアメリカの変化をどのように感じられていましたか?
何よりも最初に変わったのはジャーナリズムでしたね。報道がある種の方向に向かい、みな同じ報道をするようになり、選択肢というものが与えられなくなった。自由のために戦うか、戦わないで自由が奪われるか、という二者択一だけ。恐怖が国全体を覆ってしまい、皆が思考停止になったんですね。そのどさくさの中ですっと法律がいじられて『愛国者法』ができると、今度は監視体制が強化され、自由にモノを言ったり、疑問を投げたり議論をしたり、そういうことができなくなってしまった。自由の国アメリカではなくSF映画か旧ソ連のような状態。911の体験の中で、私が一番怖かったことです。
――――日本ではあまり話題にならなかったと記憶していますが、プライベートな通信も監視の対象になるなど、いろいろと反民主的なことが起きていたようですね。

当時のアメリカ、そしてこの10年間のアメリカについて、日本国内の報道には本質的なところが抜け落ちていたように思います。例えば、盗聴でマークされたら令状無しで逮捕されるし、ブラックリストに載ったら飛行機は乗れないし 自分の病院のカルテも、図書館から借りた本のリストも許可なく全部政府が入手できるようになったんです。ジョージ・オーウェルの「1984」とか、どこかの全体主義の国ならまだしも、こういうことが自由の国アメリカで現実に起こっていることが本当にショックでした。本来はテロリストに自由を奪われないように戦うはずだったのが、いつの間にか自国の政府によって自由が奪われてゆく、そこに大きな矛盾を感じました。
――そのあたりの想いがジャーナリストへの起爆剤になったのでしょうか?
憧れていた自由の国アメリカがこんなに変わってしまった。特にアメリカのジャーナリズムにはすごく自由なイメージを抱いていただけに考えさせられました。マスコミが変わることでこんなに国の形が、人の考え方が変えられるんだということを実感しました。ショックや明日の見えない不安の中で、ふとこう思ったんです。「幸せになりたい」と。次のテロがいつくるかわからない。あとどれくらい生きるかわからないならば、残された時間を悔いなきよう幸せに過ごしたいって・・。そのために、国が奪いつつある個人の生き方や未来を選びとる自由を、もう一度取り戻さなくてはいけない。本当のことを伝えなければ・・・。その時ものすごい使命感がつきあげてきたのを覚えています。
――小さい頃から文章表現はお好きだったのでしょうか?

そうですね。小学生の頃からモノを書くことがもう大好きで、特に他の子が書かないようなことを書いては、いろいろな人に伝えようとしていました。通っていた和光小学校が、他人と違う意見を言うことに価値がおかれる教育をしていたこともあり、とにかく教室では生徒達が、できるだけ人と違うクリエイティブな見方、個性的な意見を競って発信していました。
――その頃からジャーナリストの片鱗は芽生えておられたのですね。
子どもの頃、自分が書いた本が本屋さんに並べてあることを夢見ていたので、今思うと、まさに夢がちゃんと叶っているんですよね。ほかの子と違う視点を出せば先生がそれを評価してくれて、みんなの前で発表させてくれたり、コメントしてくれたり。学校ですごくポジティブなフィードバックをもらったことで、自由に発想し、伝えることの喜びを味あわせてもらいました。
――良い先生と良い環境に恵まれていたのですね。
はい。ほんとにあれは和光小学校の持つ自由な環境と先生方の姿勢のおかげだと思っています。
堤未果さんプロフィール
ジャーナリスト。東京生まれ。和光小、中、高卒業後、アメリカに留学。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士課程修了。国連、アムネスティインターナショナルNY支局局員を経て、米国野村證券に勤務中に9・11に遭遇。現在はニューヨークと東京間を行き来しながら執筆、講演活動を続けている。
第一線のジャーナリストの方にインタビューをさせていただくことは、光栄であるとともに大変な重圧でした。その心を読まれたのか、直前の日曜日に出演された、NHKの「課外授業 ようこそ先輩」の撮影時のエピソードや母校の和光小学校の話でひとしきり盛り上がり、和やかな雰囲気の中でインタビューが始まりました。堤さんは、言葉を選びつつ丁寧にお話をされ、講義を受けるように理解できたのと同時に、堤さんの瞳の奥に力強いメッセージを感じとることができました。
後編では、市場原理が暴走しているアメリカの現状や、人間であるジャーナリストの使命など、さらに詳しく掘り下げたお話を伺います。どうぞ、お楽しみに!
by ニフティ「想い伝え隊」岡本、大空、高沢
(撮影)瀬津、後藤
関連サイトの紹介
● 堤未果オフィシャルウェブサイト
http://mikatsutsumi.org/
堤さんの著書をご紹介します。
【主な著書】
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社会の真実の見つけ方 |
価格:861円(税込) |
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もうひとつの核なき世界 真のCHANGEは日本が起こす |
価格:1,470円(税込) |
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報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 |
価格:500円(税込) |
|
アメリカから〈自由〉が消える |
価格:735円(税込) |
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ルポ貧困大国アメリカ 2 |
価格:756円(税込) |
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ルポ貧困大国アメリカ |
価格:756円(税込) |
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コミック貧困大国アメリカ |
価格:1,260円(税込) |
|
正社員が没落する 「貧困スパイラル」を止めろ! |
共著:湯浅誠 |
|
報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 なぜあの国にまだ希望があるのか |
価格:1,680円(税込) |
|
アメリカは変われるか?立ち上がる市民たち! |
価格:1,050円(税込) |
|
グラウンド・ゼロがくれた希望 |
価格:650円(税込) |
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はじめての留学 心の友だち 不安はすべて乗り越えられる! |
価格:1,680円(税込) |
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この星の時間 ベスト・エッセイ |
日本文藝家協会編 |
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格差社会という不幸 |
神保・宮台激トーク・オン・デマンド |
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感動する仕事!泣ける仕事! 4 お仕事熱血ストーリー幸 |
日本児童文芸家協会 編 |
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