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Vol.26 三本裕子さん(前編) 物質的な豊かさから精神的な豊かさへ

第4期の環境省の環境ビジネスウィメンに任命され、国際青年環境NGO A SEED JAPANの事務局長としても活躍されている三本裕子さん。高校時代から環境活動に携わり、国連持続可能な開発サミットなど国際会議への参加や、ヒトや環境にやさしい小型家電づくりを促す具体的な活動など、様々な視点から三本さんの社会観について伺いました。

――今のような活動を始められたきっかけを教えてください。

私は神奈川県の三浦市という三方を海に囲まれたところで育ったので、子どもの頃から漠然と地球環境について関心を持っていました。中学の公民の授業で自由課題のレポートを書くとき、なぜか「公害だ!」と思って、水俣を題材に選んだのです。図書館で資料請求していろいろ調べているうちに、被害者の方の実際のお写真や「踊り猫」と言われる水銀被害のストーリーに触れて、なぜこんな問題が起きてしまったのかと、強い関心を持つようになりました。これが環境活動に目覚めた一番のきっかけです。

その後、私が進んだ神奈川総合高校には個性化コースというのがあり、個人の関心で授業を選べるしくみになっていたので、環境について深く勉強するようになりました。そして、環境問題にとても熱心に取り組んでいた先輩に引っ張られるように関わり始めたのが、エコ・リーグ(全国青年環境連盟)という団体です。

――高校生の頃からこうした活動に取り組んでこられたのですね。ご家族はどのように感じておられたのでしょう?

【お父様のことを語られる三本さん】
【お父様のことを語られる三本さん】

父は石油会社に勤めていましたので、ある意味、環境保全とは相反する仕事をしていたわけですが、私の活動に対して反対はしていませんでした。ただ、私が活動にのめり込んで家に帰れない時期こそ怒られましたが(笑)。基本的には「自分の生きたいように生きなさい」という感じです。高校生のときに父に言われて心に残っていることがあります。『地球温暖化』について話をしていたときのことです。父は石油もその原因の1つだと説明してくれて、「矛盾しているようだけど、今、環境について勉強して、資格を取ろうとしているんだよ」と言っていました。父も自然が好きなんですよね。だから、矛盾を感じていたりしながらも、地球環境を良くしていきたいっていう父の思いは強く感じました。

――信頼を得て邁進していらっしゃるんですね。

ただ、経済の話とかはしないようにしています。ぶつかるから(笑)。低成長に合わせるか高度成長を目指すかなど、最初からぶつかることはわかっているし、無駄に苦しめたくないっていうところもあったりするし。それはもう、生き方で見せればいいんじゃないかなって。

――ところで、国際青年環境NGO A SEED JAPANとの出会いは?

活動をしていく中で、A SEED JAPANに出会いました。エコ・リーグと兄弟みたいな関係の組織ですけれども、エコ・リーグが裾野を広げていくような組織だとしたら、A SEED JAPANは具体的な問題を扱う団体です。ある問題に対して解決策を出すようにアプローチしていくんですよね。そういうところに私は興味を持つようになり、A SEED JAPANに関わり始めました。また、2002年にヨハネスブルグで行われた持続可能な開発サミットという国連がホストを務める会議に参加したこともNGOで働こうと思うようになった大きなきっかけです。アパルトヘイトの傷跡のある国で国際会議に届かない現地の人々の声を唯一届けようとしていたのがNGOでした。

――約9年間 A SEED JAPANで活動をされてきた中で、これは間違いなく面白いことやったぞということを1つ教えてください。

【使用済み携帯電話を回収する
<br/>ジャングルボックス】
【使用済み携帯電話を回収する
ジャングルボックス】

私自身が立ち上げたわけではありませんが、関わったものでは、「エシカルケータイキャンペーン~ヒトもゴリラも傷つけないケータイをつくろう!~」が一番面白いと思っています。元々、A SEED JAPANで「ケータイゴリラ」というプロジェクトがあり、その背景も踏まえて立ち上がったキャンペーンです。「ケータイゴリラ」は、使用済みの携帯電話から抽出した価値ある金属を売却して得られた利益を野生のゴリラを守るために寄付するしくみです。レアメタルを含めていろいろな金属を採掘するときは大きな環境破壊を伴います。金を1グラム採るために1トンの土砂を排出する場合もあるんですよ。しかも、その際に水や電気を大量に使います。山を丸ごとつぶしてしまうような環境破壊で、アフリカのコンゴ民主共和国でその影響を受けている野生生物がゴリラなんです。それで、「ケータイゴリラ」と名付けたんですね。

「ケータイゴリラ」の活動に加えて、さらに「鉱物採掘そのものが人権配慮され、環境負荷を減らす」ための議論に膨らませたものが「エシカルケータイキャンペーン」です。日本は銅などを100パーセント輸入していますが、例えばそれを製品として利用している企業がCSRの一環として、環境への充分な配慮があり、かつ、児童労働などの人権侵害に関わっていない金属のみを調達するよう基準を作った上で、製品を市場に流通させていく。そのために、輸入元までさかのぼって環境負荷を減らしていく戦略をたてて、どうすれば実現できるかの議論を企業の方々に対して巻き起こしていきたいと考えています。

――環境保護だけを目的とした活動ではないのですね。

エシカルは「倫理的な」という意味です。グーグルなどで調べると“環境配慮“とか“人権配慮“のように訳されています。A SEED JAPANは青年環境団体ではあるんですが、結果的には環境以外のこともやっているんですよね。ですから、開発の悪影響とか不平等・不公正の解消などにもつながる、『エシカル』という言葉を広めていきたく思っています。ところで、「エシカル・ジュエリー」ってご存じですか?

――『エシカル・ジュエリー』 ですか?

【身につけているエシカル・ジュエリーを見せてくださる三本さん
【身につけているエシカル・ジュエリーを
見せてくださる三本さん】

「エシカル・ジュエリー」は、フェアトレード素材・リサイクル素材を使用したジュエリーで、これはHASUNAさんが制作したものです。こちらでは、金属調達でコロンビアの『オロ・ベルデ財団』とパートナーシップを組んでおり、川底をザーっとさらって採った砂金を使っています。その地域の小規模農家の方や貧困状態におかれている人々が生計をたてられるよう、無理のない雇用を生み出している、いわゆる「エシカル」なものを流通させていくミッションを持った財団です。「エシカル・ジュエリー」は日本ではほとんど知られていない状況なので、そういった情報提供も私たちの活動の一環ですね。

――日本におけるリサイクルへの取り組みは、どのような状況ですか?

私は今年度から環境ビジネスウィメンに任命いただきまして、環境大臣も参加される懇親会に3回ほど出席させていただいた際に、ケータイやレアメタルのリサイクルについて触れさせていただきました。また、エコプロダクツの際に、環境省のリサイクル室の方とも意見交換をさせていただきましたが、日本でも積極的に取り組んでいる企業もいらっしゃいます。すでに高いリサイクルの技術をお持ちの企業さんは技術があっても採算がとれず具体的に取り組めていない現状があります。しかし、その部分は国が動いています。私たちとしては、小型家電を実際に最終製品として消費者に提供している小型家電を作るメーカーさんのリサイクルや鉱物調達の部分をもっと積極的に後押しできたらと考えています。どんな活動をしていくか、キャンペーンのターゲットをどこに置くか、などは、私たちがいつも議論をしているところですが、基本的にはもっともレバレッジの効くところで私たちしかやれないところにリソースを集中していきたいと思っています。

――A SEED JAPAN の活動には、若い方が多く参加されていますよね?

【A SEED JAPAN のさまざまな活動について紹介してくださる三本さん】
【A SEED JAPAN のさまざまな活動について
紹介してくださる三本さん】

A SEED JAPANの魅力は、若いから無理だとか、できないと全く思わないところにあります。例えば、『エコ貯金プロジェクト』は、金融機関の環境配慮の基準を変えていく活動を行っているのですが、実際に手ごたえを感じていたり、天井知らずみたいなところがあるんですよね。『ごみゼロナビゲーション』や『水プロジェクト』も近い面はあると思います。

私が水の話題をやろうと思ったのは、2030年までに水のストレスにさらされる人が急増する説や、水の商品化に関心を持ったからです。端的に言うと、ボトルウォーターがあったとして、お金を持っていればそれを買うことができるし、お金がない人には買ってあげることができます。けれど誰かのために水を買ってあげる人はいても、水がなくなってしまった生態系のために自分でお金を払って水を与えようとする人って、そういないと思うんですよね。なぜなら、見返りがないから。でも、見返りがないと思われるものに対して情熱を傾けることができる、というようなところが、若者だからできることなのかもしれません。問題のしくみを深く探り、わかりやすく見せていくことができるから、若い人たちが集まってくる。このあたりが、A SEED JAPANの強みではないかと思っています。

――若い人たちの活力を感じますね!

今、就職活動などで悩んだり傷ついたりしている青年がいる一方で、たくましく生きようとする若者たちもいます。大学を1年間あえて休学して、働き先をじっくり見定めていこうとする人もいたり、多くの人の年収が600万から400万という風にどんどん少なくシフトしていく時代の中で、自分の生き方そのものを成長経済に代わるオルタナティブ経済に合わせていく動きもあります。そんな、人や社会を傷つけない経済活動の仕方や生き方を体現できるのは、今の若い人たちだからだ、という気がしています。

お金じゃないんですよね、求めているものが。つながりやコミュニティを作ることだったり、近くにいる人を幸せにすることだったり。物質的な豊かさではなくて精神的な豊かさを求めているというか、そういったところにダイナミックにシフトできる考えを持てるのは、若者の特権かなと思います。私もそれを実践していくような生き方をしていきたいと思っています。

(後編につづく)

三本裕子さんプロフィール
神奈川県三浦市出身。慶應義塾大学環境情報学部を卒業。水俣公害、米国の京都議定書離脱をきっかけに全国青年環境連盟(エコ・リーグ)などの環境NGOに関わる。2002年国連持続可能な開発サミットにおける活動をきっかけに、水、貿易、自然エネルギー、生物多様性などをテーマに国際的な意思決定の場における政策提言活動やその場に次世代の青年の声を届けるためのコーディネートを行う。2006年より国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」理事、2008年より事務局長。環境ビジネスウィメン4期。

新宿の片隅、古い民家とビルの合間にA SEED JAPANの本部があります。個人的には始めての場所ではないのですが、あらためて企業社員の目線でみると、無造作に置かれたダンボール箱や書類の一つ一つから、無限の自由さ、行動力の豊富さといった空気が伝わってくるようでした。高校生以来の活動ウィメンである三本さんは、今の場に限らず活躍を続けます。後編は今後の展望を中心にお話をお聞きします。ぜひ、お楽しみに!

by ニフティ「想い伝え隊」近藤、岡本、大空

「三本 裕子」さんからのお知らせ

関連サイトの紹介

●国際青年環境NGO A SEED JAPAN 公式サイト
  http://www.aseed.org/

 《お知らせ》 2011年3月4日(金)~5日(土) 
 【Alternative Youth Meeting 2011】「経済革命NOW!」フォーラム
 グリーンジョブで実現する未来ある生き方と経済のシステム」を開催
  http://www.aseed.org/info/AlternativeYouthMeeting2011.html

●エコリーグ(全国青年環境連盟)
  http://portal.eco-2000.net/

●エシカルケータイキャンペーン
   ~ヒトもゴリラも傷つけないケータイをつくろう!~ 

   http://www.ethical-keitai.net/

●エコ貯金プロジェクト
     http://www.aseed.org/ecocho/    

●ごみゼロナビゲーション
   http://www.gomizero.org/

●水プロジェクト
  http://www.aseed.org/asj_water/

●エシカル・ジュエリー制作・販売 HASUNA
   http://www.hasuna.co.jp/

●世界水フォーラム
   http://www.worldwaterforum6.org/

●環境ビジネスウィメン
   http://www.herb.or.jp/


関連書籍の紹介

生物多様性問題ガイドブック 生物多様性問題ガイドブック

生き物を保護するだけじゃ守れない?私たちの生活を生き物の密接な関係。
国際青年環境NGO A SEED JAPAN 発行
生物多様性問題ガイドブック編集ユニット 編
計35ページ B5版(オールカラー)2008年12月
定価 1,000円、会員価格 500円(税込)
*10冊以上お買い上げの方は会員価格でお求めいただけます

「生き物の絶滅が進んでいる」という。どうやら危機的な状況らしい。そんなことはなんとなくわかるのだが、いまひとつ危機感がわかない。そして、「生物多様性とは自然保護だけの問題ではない」という。さらに、「私たちの生活とは切り離せない関係にある」という。いったいどういうことなんだろう?
生物多様性とはどういう意味で、なぜ問題なんだろうか?
このガイドブックでは、前半に生物多様性の危機の現状や、求められる対策をQ&A方式でまとめ、後半では生物多様性の喪失が私たちの生活にどれだけ悪影響を与えるのかを事例を取り上げながら紹介しています。例えば、魚の獲り過ぎによる失業や、単一品種の栽培による作物の絶滅問題、貧困と生物多様性の関係など深刻な問題があります。
知識を得るだけで行動を伴わないのであれば、何も変わらない!という想いからアクションリストも付け加えました。
生物多様性に関する様々な難解な問題をわかりやすく伝えるために、できるだけ馴染みのある言葉を使い、写真や図・イラストがたくさん詰まっているガイドブックです!
 http://www.aseed.org/shop/products/bd_guide.html

グローバライゼーション・ガイドブック グローバライゼーション・ガイドブック

環境・貧困問題と経済の関係・仕組みがまるわかり!
A SEED JAPAN 発行 計108ページ
464g A4版 2004年2月
定価 700円、会員価格 500円(税込)
*10冊以上お買い上げの方は会員価格でお求めいただけます

「経済のグローバライゼーション(以下、経済のグローバル化)」とは、モノ(貿易)・カネ(マネー)の移動速度・範囲の拡大のことです。経済のグローバル化に注目が集まってきたのは1990年代後半からです。それから急速に地球環境問題や南北問題へ影響を与えている、もしくはつながりがあるという視点で語られるようになりました。農業・森林・貧困・食の安全・労働・環境・生物多様性・HIV・通貨危機・水などの天然資源のアクセス…。これらの問題の背後に「経済のグローバル化」とそれを推進するWTO(世界貿易機関)(と、それを推進する先進国政府・企業)の仕組みが横たわっているのです。

これらの仕組みの解明に言及した本は他にも発行されていますが、本書ではまずそれぞれの社会問題と経済のグローバル化の関係を初級・中級と分け、初めて経済のグローバル化について学ぶ方にとって読みやすい構成に編集しています。経済のグローバル化について考えてみようという方や、一家や一団体にぜひ置いていただきたい1冊です。
http://www.aseed.org/shop/products/gl_guide.html

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