高校時代から環境活動に関わり、現在、環境省の環境ビジネスウィメンとしても活躍中の三本裕子さん。ともに環境問題に取り組んでいる仲間たちの人生設計からご自身の今後の展望まで、また、持続可能な経済のしくみやその中で日本人ができること、参加型社会を実現する秘訣など幅広いお話を伺いました。
――A SEED JAPAN には多くの若い人が参加されていると伺いましたが、貴団体に関わった方々のその後の人生についてお聞かせください。
いろいろな方がいらっしゃいます。一般の企業に行かれる方もたくさんいますが、中には政治家を志した方や、政策秘書をされている方もいるようです。また、農業の分野に進まれる方、地方でコミュニティ作りに尽力している方、それから自分で会社を立ち上げる方もいます。実際、麻(ヘンプ)をテーマに会社を立ち上げた先輩もいらっしゃいました。
――麻(ヘンプ)ですか?
はい。オルタナティブ経済、つまり脱石油社会みたいなところを目指して、そのためにもっと使われるべき素材はヘンプだということで、いろんなところで展開されています。やはり、「公」というキーワード、公共的な、公益というところをテーマに仕事を選ぶ人が多い気がしますね。あとは、今すごくがんばって活動している学生さんの中には、金融について学んで、そちらの方向に進む予定だとか。
――金融というと、先ほど(前編)のお話にあった、エコ貯金の関係ですか?
そうですね。環境に配慮した事業を回すために、しっかりファイナンスがされるしくみを作っていきたいと考えて、そういうところに行かれる方もいらっしゃいます。
――ところで、三本さんとしては、今後どういった方面に進まれたいとお考えですか?

A SEED JAPANは、有給スタッフの契約を4年や5年というふうに決めており、常に新しい血を入れていくようにしています。これもこの団体の魅力の一つだと思っています。実は、私もあと3カ月で任期を迎える予定なんですが、その後の私の生き方をどうしていくかと考えたとき、この国や世界のあり方に影響を与えるような生き方をしていけたらと思っています。
経済や資本の流れを考えたときに、その資本を流していくパワーバランスみたいなものが世の中にはあると思うんですけれど、パワーを持っている人がパワーのない人を搾取してはならない、そうあってほしくないと思っているのです。
人々はお金の流れに頼らなければ生活できないんだけれども、それに飲まれてしまって、気づかないうちに自分で自分の首を絞めていたりすることもあるのではと思うのです。でも、そうではない経済の流れの中でも生きていくことができるし、むしろそういった生き方を主流化していくべきだと私は思っていて、それを実践したり体現したりしていくような活動をしていきたいです。
――具体的にはどのようなことを考えておられるのですか?
普段、私たちは水や鉱物を何気なく使っていたり、自分の感覚にあわせ使い切っているみたいなところがありますが、そういった天然資源はある国のある土地に偏在して眠っているわけですよね。なのに、法的に明確な配慮もなく巨大資本がそれを採って、そのまま商品化していくといった実態に対して、あまりルールがないのは不自然だと思うんです。そういったところで何かしていきたいと考えています。国際的になのか、政治としてなのかはまだわからないんですけれど、ボランティアのみではなく継続していくために、ビジネスや事業としてお金の流れをきちんと作っていくのが大事だと思っています。
――サスティナブル、つまり持続可能な経済のしくみは大切ですよね。
今、中国・インド・ブラジルなど、もう少し世界を見なければいけないと思っています。その国々によって、問題意識や対策は、ビジネスの世界でもあまり徹底されていない気がしますし、国としても特にされてない気がします。日本の国内でいうと、国の100年先を見据えた政策が打たれていないと思います。少子高齢化が進み、若年層の負担が増えていく中で、それを是正するための政策が打たれていたれているかというと、まだまだだと思っています。次世代の青年の立場からも、何かやっていくべきだと思っていますね。あと、日本中の各地域で、もっと持続可能なお金の流れが盛んになるといいですよね。高度成長ではなく、定常成長に対応していけるような日本であったり地域であったり世界であればいいなぁ、と思っています。
――そのために、私たち日本人ができることって、何かありますか?

ごみゼロナビゲーションの様子】
そうですね。二つあると思います。
一つ目は今回のように企業さんと協働で何かをさせていただくこと。日本企業は世界経済の中で影響力をもっているので、その経済活動が環境配慮されることは環境負荷を減らすことになります。その際、基本的にお互いが立場の違いを理解した上で、協力しあえる姿勢、いわゆる「和を尊ぶ」というようなところは特徴のような気がしています。
二つ目は連帯感でしょうか。『ごみゼロナビゲーション』では、年間900人くらいのボランティアをコーディネートしているんですけれど、若い人たちがロックフェスティバルという非日常の空間でごみの分別を来場者に促すうちに、ものすごく団結するんですよ。それも、チームごとにすごく盛り上がったりするのは、日本的なのかもしれませんね。
ところで、世界の6大都市の中で、東京に住んでいる人たちは、環境問題について意識が最も高いというデータがあるんですよ。「何かしたい」と思っている人が断トツに多いんです。けれど、実際の行動状況を示すデータを見ると、そんなに高くはありません。つまり、意識は高いのにあまり行動できていないんですね。それは、行動するためのしくみがないことも影響していると思います。日本人は、しくみさえあれば、ある意味従順にやっていく市民性を持っているので、まずはこういうしくみが必要だよ、と私たちが言い続けていくことが大切だと思っています。
――しくみを作って参加してもらうということですね。

語られる三本さん】
A SEED JAPANも私個人も、共通で目指しているのは「参加型社会」であって、いろんな社会問題にみんなで関わっていくことだと思っています。
環境や開発の問題に対して能動的に動ける市民がいて、その人たちが動き始めたときに、例えば法的な小さな障害につまずかないでやり遂げられるようなしくみになっていれば、多くの問題は解決できるんじゃないかと。そういった問題を解決していけるだけのパワーがいつも市民にあふれているような社会を実現していきたいという思いがありますね。すべての場において「参加」というのは大事なキーワードだと思っているので、市民である私たちが草の根で出会った人たち全員と一緒に、参加型社会を目指していけるといいなと思いますね。
――最初は参加してもらうのが難しいと思いますが、何か秘訣はありますか?
参加型社会を遠ざけている原因というのは、権限委譲することへの怖れではないかと思います。日本人が完璧主義だったりマジメすぎたりっていうことなのかもしれませんが。どうしてかというと、自分の権限でなくなることにより、事がまとまるのか不安という気持ちがあるんじゃないでしょうか。私たちは、いろんなメンバーに物事を頼む際、彼らが成長してくれることを期待します。そのときはまだできないかもしれないけれど、ちゃんと期待するし、もしできなかったとしても次はうまくできる、という期待もする。不安であっても、そういう期待をしておかないと、任された側に自分の責任範囲を把握する力だとか目の前のことをやり遂げる責任感などが育たないと思うからです。
――ところで、活動の中ではいろいろ大変なこともあったかと思いますが、そんなとき、心の支えになった言葉などがありましたら教えてください。
一つは、佐久間智子さんの「人はみな生活者であって、消費者ではない」という言葉です。これは本当にそう思いますし、迷ったときにはいつも大事なところに引き戻してくれます。
それからもう一つは「いつもプロセスの途中である」という表現です。先が見えないから辛くなったり疲れてしまったりすると思うのですが、常にプロセスの途中であると自分自身そう感じていることで、そこから前に進めるというか。
――最後に、今後の計画や抱負など、お聞かせください。

2012年の3月に世界水フォーラムがフランスで開催されるので、そこに向けて1年間かけて活動を作っていく計画があります。私はこの3月にA SEED JAPANの有給スタッフを卒業するのですが、『水プロジェクト』のメンバーではあり続けるので、1年間はこの活動を継続していく予定です。
また、いつかという意味も含みますが、ほかの市民団体において、今までの経験を生かした活動をやっていくことを考えています。それから、環境ビジネスを事業化しているところで修業させていただくこと。人生の中で一度やってみたいのは、企業の中でCSRに関わる仕事ができたらいいなと思っています。将来的には自分でNGOを立ち上げたり、事業化をする主体になったりもしてみたいですね。いつになるかなぁって思ってるんですけど(笑)。まだ決まってはいませんが、いろんな選択肢を考えています。2月にインドネシアと中国に行こうと思っていますので、面白いことがあったらぜひご報告させていただきますね。
三本裕子さんプロフィール
神奈川県三浦市出身。慶應義塾大学環境情報学部を卒業。水俣公害、米国の京都議定書離脱をきっかけに全国青年環境連盟(エコ・リーグ)などの環境NGOに関わる。2002年国連持続可能な開発サミットにおける活動をきっかけに、水、貿易、自然エネルギー、生物多様性などをテーマに国際的な意思決定の場における政策提言活動やその場に次世代の青年の声を届けるためのコーディネートを行う。2006年より国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」理事、2008年より事務局長。環境ビジネスウィメン4期。
国際環境NGOというだけあって、事務所の暖房は最小限。三本さんをはじめ、高校生を含むメンバーは上着に頼ることもなく、平然としていました。一方、パソコンの熱に慣れた私たちにとっては少々寒いぐらいで、すでに体がぜいたくになっているのかもしれません。外での撮影でも上着を羽織らず、エシカル・ジュエリーを胸に輝かせていた三本さんの気概が、少しでも世界の諸問題の解決につながってほしいものです。
by ニフティ「想い伝え隊」近藤、岡本、大空
関連サイトの紹介
●国際青年環境NGO A SEED JAPAN 公式サイト
http://www.aseed.org/
《お知らせ》 2011年3月4日(金)~5日(土)
【Alternative Youth Meeting 2011】「経済革命NOW!」フォーラム
グリーンジョブで実現する未来ある生き方と経済のシステム」を開催
http://www.aseed.org/info/AlternativeYouthMeeting2011.html
●エコリーグ(全国青年環境連盟)
http://portal.eco-2000.net/
●エシカルケータイキャンペーン
~ヒトもゴリラも傷つけないケータイをつくろう!~
http://www.ethical-keitai.net/
●エコ貯金プロジェクト
http://www.aseed.org/ecocho/
●ごみゼロナビゲーション
http://www.gomizero.org/
●水プロジェクト
http://www.aseed.org/asj_water/
●エシカル・ジュエリー制作・販売 HASUNA
http://www.hasuna.co.jp/
●世界水フォーラム
http://www.worldwaterforum6.org/
●環境ビジネスウィメン
http://www.herb.or.jp/
関連書籍の紹介
![]() |
生物多様性問題ガイドブック |
生き物を保護するだけじゃ守れない?私たちの生活を生き物の密接な関係。 |
「生き物の絶滅が進んでいる」という。どうやら危機的な状況らしい。そんなことはなんとなくわかるのだが、いまひとつ危機感がわかない。そして、「生物多様性とは自然保護だけの問題ではない」という。さらに、「私たちの生活とは切り離せない関係にある」という。いったいどういうことなんだろう?
生物多様性とはどういう意味で、なぜ問題なんだろうか?
このガイドブックでは、前半に生物多様性の危機の現状や、求められる対策をQ&A方式でまとめ、後半では生物多様性の喪失が私たちの生活にどれだけ悪影響を与えるのかを事例を取り上げながら紹介しています。例えば、魚の獲り過ぎによる失業や、単一品種の栽培による作物の絶滅問題、貧困と生物多様性の関係など深刻な問題があります。
知識を得るだけで行動を伴わないのであれば、何も変わらない!という想いからアクションリストも付け加えました。
生物多様性に関する様々な難解な問題をわかりやすく伝えるために、できるだけ馴染みのある言葉を使い、写真や図・イラストがたくさん詰まっているガイドブックです!
http://www.aseed.org/shop/products/bd_guide.html
![]() |
グローバライゼーション・ガイドブック |
環境・貧困問題と経済の関係・仕組みがまるわかり! |
「経済のグローバライゼーション(以下、経済のグローバル化)」とは、モノ(貿易)・カネ(マネー)の移動速度・範囲の拡大のことです。経済のグローバル化に注目が集まってきたのは1990年代後半からです。それから急速に地球環境問題や南北問題へ影響を与えている、もしくはつながりがあるという視点で語られるようになりました。農業・森林・貧困・食の安全・労働・環境・生物多様性・HIV・通貨危機・水などの天然資源のアクセス…。これらの問題の背後に「経済のグローバル化」とそれを推進するWTO(世界貿易機関)(と、それを推進する先進国政府・企業)の仕組みが横たわっているのです。
これらの仕組みの解明に言及した本は他にも発行されていますが、本書ではまずそれぞれの社会問題と経済のグローバル化の関係を初級・中級と分け、初めて経済のグローバル化について学ぶ方にとって読みやすい構成に編集しています。経済のグローバル化について考えてみようという方や、一家や一団体にぜひ置いていただきたい1冊です。
http://www.aseed.org/shop/products/gl_guide.html
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