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Vol.25 緒方篤さん(後編) 日本と海外の両方に通じる笑いを追求していきたい

米国ハーバード大学を卒業後、富士通研究所勤務、MITへの留学、富士通花の万博推進室在籍後、ドイツのKHMメディア・アート・アカデミーに客員作家として招聘。以後、映像作家・監督として、ドイツ、オランダ、米国、日本で活動中の緒方篤さん。サラリーマンから映画界への転身の経緯や、映画監督になられるまでの想いやご経験などエネルギッシュなお話を伺いました。

――緒方さんが今のお仕事をされるようになったきっかけや経緯をお聞かせください

元々僕は不器用だったので、自分が美術の方面に進むとは思っていませんでした。それが、高校の時に父が買ってくれたスチルカメラを自然にうまく使えるようになって、自分で現像を習い、自宅の洗面所を改造してカラーの焼き付けをやるようになりました。また、8mmフィルムを自分で撮影したり編集したりと、趣味でそんなこともやっていました。
大学では文系でもなく理系でもなく、経済とか哲学、コンピュータなどを学びました。それで帰国して富士通に就職したのですが、13才から22才までアメリカにいた後で、いきなり日本の会社に入ったので、凄いカルチャーショックを受けました。

――アメリカの学生生活と、日本の会社員生活では、大きなギャップがあったのではないでしょうか?


【サラリーマン時代のエピソードを語る】

例えば、当時フレックスタイムはなかったので、朝、タイムカードを押さなきゃならないんです。僕はいつもギリギリで、僕が走ってくると他の社員の人たちが振り返って、「もうそんな時間!大変だ!」って、みんな一斉に走り出して、始業1分前にカチッとカードを押す、なんて生活をしていました(笑)。そんなことやっているうちに、奨学金を貰ってMIT(マサチューセッツ工科大学)に行くことになりました。アートとテクノロジーを融合させるような研究テーマだったのですが、MITではビデオの機材が使い放題だったので、そっちの方に病み付きになっちゃって、結局卒業した時にはビデオアーティストになっていました。
日本に戻ってしばらくは、花の万博推進室に所属し、富士通の画像認識や画像処理システムとアートを融合させた展示物を企画・制作したりしました。でも、本当のアーティストとして進むには、富士通に居ながらでは難しいなと思い始めていました。

――それでドイツへ渡られるわけですね?

ビデオアートの分野では、ドイツやオランダが進んでいましたので、そちらの専門家の人たちに手紙を書いたり、助成金を探したりしていました。そんな時、MITに客員作家で来ていたアーティストの知り合いが、ドイツで創立されたばかりのメディアアートの大学院(KHM)の学部長になって、9月の上旬だったと思いますが、10月から始まる次の学期から、客員作家として是非来て欲しい、と連絡をくれたのです。
招聘の手紙を書いてくれれば、次の春ぐらいには助成金がもらえるかもしれないと返事したのですが、来年の春にはその話はないかもしれないし、助成金はKHMの方で支給するから、今来てくれ、と言われて。「えーっ?今から3週間で?!」という感じでしたが、一生に二度ないチャンスだと思って、上司に話をしました。そして、会社を辞めてドイツにすっ飛んで行ったわけです。ドイツ語も分からないのに、ドイツ語のカセットだけ買って、気がついたらもう飛行機に乗っていました(笑)。

――ヨーロッパでは、どんなお仕事をされたのですか?


【ヨーロッパの映像祭での人との出逢い】

それまでもヨーロッパのビデオフェステバルなどに作品を応募していたのですが、現地に行くことはほとんどありませんでした。それが、ヨーロッパにいると、どの国も近いからあちこちから招待されるんですね。日本風の瞑想的な作品だったし、僕は英語を喋るので、スペインからポーランドまで、いろんな国の映像祭に呼ばれて自分の作品を発表し、また新作の制作も委託されました。
オランダの映像祭で、たまたま同じケルンに住んでいるドイツのテレビ局出身のベテランのプロデューサーと知り合って、脚本を書く助成金を貰い、それがきっかけで、脚本を書くようになりました。そうこうする間に、僕自身が他の人の作品に出演する機会も出てきて、映画監督をするには演技を習ったほうがいいということもあって、2002年にニューヨークに行き、6カ月間、フルタイムで俳優のための演技学校に通いました。

――映像制作から脚本制作、演技と活動範囲が次第に広がってきたのですね。ニューヨークの後はどうなさったのですか?

その後、またヨーロッパに戻って、オランダでテレビのクイズ番組に出演するようになりました。その経緯も面白かったんですよ。街の中を歩いている時にいきなり携帯電話がかかってきて、「今から電話でオーディションする」って言うんです。観光客が歩いている街中の運河のところで、電話に向かって怒鳴ったり叫んだり、いろいろしなきゃいけなくて。周りにいた人たちは、「何やってんだろう??」って思ったでしょうね(笑)。
それで、毎週月曜日の夜10時の国営テレビの番組に出ることになりました。僕は番組の中でスコアキーパーになって、『Aチーム、たくさん。Bチーム、0点』、『ハクション! あ、すいませーん』とか字幕なしの日本語で喋って、皆を笑わせていました(笑)。全国放送で毎年27週間放送(9週間番組が3回再放送)されたので、たくさんの人が見てくれて、近くの喫茶店で働いている人やアパートの上の階の人からも、『お、昨日テレビに出ていましたね!』と言われるようになって、知られていきました。

――テレビ出演を経験された後、映画監督としても活躍されるのですね?


【短編映画『不老長寿』より
益岡徹さん(左)と池田道枝さん(右)】

ずっと脚本は書き続けていたので、作品を作らないと脚本が溜まっていきます。それで、まずは短編映画を監督してみようと思いました。短編ができないと長編にはなかなか行けませんので。そんな時、たまたまオランダの映画学校の卒業作品に出演しました。それは引きこもりをテーマにした劇映画で、僕はインチキ心理学者の役だったんですけど、みんな凄く面白がってくれました。それで、翌年、その卒業生たちに手伝ってもらって、オランダで初めて短編映画を監督しました。
その年末に、休みで帰国すると、たまたま、父が入院することになり、10年ぶりくらいで日本に長く滞在することになりました。その際に短編映画『不老長寿』を撮ることになりました。前から参加している「大地の芸術祭」というのがあって、新潟の十日町を中心に行う芸術祭なんですけれども、『不老長寿』のストーリーも十日町でおこる話ということで提案したら、通ったんです。

――海外生活が長いですが、海外で困ったこととか、また海外に住んでいて良かったこと、今役立っていることなど、聞かせていただけますか?

海外だから困ったこと、というのは特にありません。だって困ったことは、別に海外でも日本でも起きますし。お金がないとか、なかなか映画が作れないとかね(笑)。
ずっと日本にいなかったことが良かったかどうかは分からないですが、そのぶん広く色々なところで暮らせたから、いろいろな国の生活や、国ごとに制度が違うことなどを知ることができたのは役に立っていますね。ヨーロッパに住んで感じるのは、車に乗って数時間行けば違う国ですから、ほかの国とか他の文化に対して非常にオープンです。それはアメリカもそうですけれど。日本は海外との間に隔たりがありすぎて、だから世界で何が起きているのかよく分からないという感覚があるように思います。

――ところで、趣味というか、最近、興味を持って取り組んでおられることは何かありますか?

最近は、映画の製作と宣伝活動などで全然時間がないので、睡眠をとるのがホビー、そういう感じです(笑)。それから、即興劇をやるのは気分転換になりますね。

――即興劇ですか?


【即興劇は役に立って楽しいですよ
と語られる緒方さん】

即興劇はアメリカで演技の学校に通っていたときに始めました。台本がない演劇です。普通の演劇だと、前以てセリフを覚えてやらなければなりませんが、即興劇はいつでもどこでも、例えば、その週に時間が空いていれば、その場に行ってすぐにできます。即興劇の経験は、オランダでテレビ番組に出た時にもすごく役に立ちましたし、脚本を書く上でも非常に役立っています。日本に戻ってきてからも、『ピンクカウ』という渋谷のレストラン・バーで、毎月のように即興劇の公演や司会をしていました。最近は映画のほうがあまりにも忙しくなったのであまり行っていませんが。
映画を撮る時も、役者さんたちにそのキャラクターになってもらって即興劇をやることがあります。こういうことは日本ではやられてないみたいですが、海外では例えばマイク・リーという英国の監督は、脚本を書かないで役者の人たちに何カ月もそれぞれのキャラクターを即興で演じてもらって、そこから脚本を書いています。極端ですけど、面白いと思いますね。
また、企業研修で、外部から即興劇を教える講師を呼んで、社内では上司と部下という関係の人たちに違うキャラクターになって演技をさせて、社内コミュニケーションを促進するという会社もあります。

―――ありがとうございます。では最後に、今後の活動計画や抱負などについてお聞かせください。

次回の作品は、犯罪コメディを英語でやろうと思っていて、いま脚本を調整中です。舞台はアメリカとヨーロッパで、私もちょっとだけ出演しようと思っています。『不老長寿』も詐欺師とおばあさんの騙し合いでした。騙すような要素があったら面白いし、コミカルで、その中に普遍的なテーマがあってもいいなと思っています。
ウディ・アレンの『スコルピオンの恋まじない』 という映画の中で、彼は保険の調査員を演っているのですが、ある日レストランで催眠術にかけられます。その後は催眠術師から電話があると、無意識のうちに、泥棒をしてしまいます。次の日に犯行現場に保険の調査に行くのですが、実は自分が前の日に盗んでいるんですね。でも本人は全然、気がついていない。ああいうのは、すごく面白いなと思います。
映画は実現するのがなかなか大変です。考えることはできますが、実際にどういうふうに実現していくか。誰に協力してもらって、どういう人に出演してもらうかなど、これからいろいろ調整しながら、取り組んでいきたいと思っています。

緒方 篤さんプロフィール
米国ハーバード大学学士課程卒、富士通入社。休職し、米国に留学しMITマサチューセッツ工科大学修士課程卒。復職し、富士通の花の万博推進室に在籍後、ドイツのKHMメディア・アーツ・アカデミーに客員作家として招待され、退職。以後、ドイツ、オランダを中心に映像作家、脚本家、俳優、映画監督として活躍。監督を務めた短編映画『不老長寿』は、ニューヨークの近代美術館MoMAとリンカーン・センター共催の映画祭ニューディレクターズ・ニューフィルムズ2007年に日本から唯一入選。バンコク、ハリウッド、ボストンの国際映画祭で受賞、カリフォルニア、サンパウロ、ベルリンなど多数の映画祭にも入選するなど、国際的実力派の新鋭映画監督。神戸市で生まれ、ロンドン、東京、ニューヨークで育つ。父は日銀理事を務めた緒方四十郎さん、母は元国際連合難民高等弁務官の緒方貞子さん。

インタビューの中では、ショートコントを思わせるユーモラスなエピソードが随所に出てきて、コメディを地で行く緒方さんの人柄がうかがえました。次回作は英語で作られるという緒方さん。国際的な映画監督としての活躍をお祈りします。

by ニフティ「想い伝え隊」須田、岡本、大空

「緒方 篤」さんからのお知らせ

映画 『脇役物語』 関連情報の紹介

緒方監督サイン入りプレスブック(非売品)
映画『脇役物語』のプレスブックに緒方監督自らサインをしていただいたものです。
(プレスブックとは、映画の試写会等でプレス向けに配るもので非売品です)
映画『脇役物語』のプレスブック

応募受付は、2010年1月10日(月)に締め切りました。厳正なる抽選を行い、当選者の方に発送させていただきます。多数のご応募、ありがとうございました。

『脇役物語(Cast me if you can)』

原案・脚本・製作・監督:緒方篤
出演:益岡徹、永作博美、津川雅彦、松坂慶子、柄本明、前田愛、佐藤蛾次郎


人生、誰もが脇役で、誰もが主役。
全ての人の心を愛と笑いで満たす、ユニバーサルな人生讃歌。
上海、カリフォルニア、ニューヨーク、インドなど多数の国際映画祭でも
観客が爆笑。世界を笑いと涙の渦に巻き込んだロマンティック・コメディー。

公式サイト:http://wakiyakuthemovie.com/
予告編:http://www.youtube.com/watch?v=YOPVp5VCSlA

公開情報:全国順次公開中!  http://wakiyakuthemovie.com/
神戸/青森 12/18-12/24、愛媛 12/18-12/31、山形 1/1-1/7、静岡1/22-2/4、岩手1/29-2/4、福島 2/12-2/18、京都 近日



◆DVDリリース情報:2011年2月25日より発売予定
特典映像には、あの”幻の名作” 「不老長寿」、監督コメンタリー(日本語と英語)、予告編(日本語版と英語版)、メイキング、そして舞台挨拶を見損なった方のために、プレミア試写と初日舞台挨拶のハイライトを収録! ご家族、お子様、親御さま、お友だちや恋人などへのプレゼントに是非ご利用ください!

脇役物語 脇役物語~Cast me if you can [DVD]
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品番:TOBA0022  定価:セル3,990円(税込)
アマゾン: 参考価格:3,990円→2,953円(26%OFF)
本編:97分+特典映像+英語字幕
発売:ティー・オーエンタテインメント 販売:TOブックス
発行年月:2011/02

◆ノベライズ発売情報ノベライズ本発売中

脇役物語 脇役物語

価格:700円(税込)
ISBN:ISBN:978-4-8124-4395-8
出版社:竹書房
発行年月:2010/10

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コメント

サイトを拝見させていただきました。
参考にさせて頂きます。
何卒よろしくお願いします。

投稿: 木下由美子 | 2011年1月 8日 (土) 15時58分

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