学生時代、ITベンチャーの経営者として活躍しつつも、「自分は何をしたいのか?」という疑問を持ち、その疑問を解決すべくNPOへの転身を決意。その後、NPO法人フローレンスの代表理事として病児保育の問題に取り組み、育児と仕事が両立できる社会づくりを目指す駒崎さんに、事業で社会的課題を解決する社会的企業(ソーシャルビジネス)についてお話を伺いました。
――最初に、駒崎さんが代表理事をされているNPO法人フローレンスの活動内容についてお聞かせください。
「子どもが病気になったときの預け先がない」というのは、育児と仕事を両立させようとされているお父さん、お母さんにとっては、保育園が足りないと騒がれている待機児童の問題と同じくらい重要な問題です。NPO法人フローレンスでは、この「病児保育」の問題を地域の力で解決しようと、地域密着型の病児保育事業を展開しています。地域の小児科医や、子育てベテランママの協力を得ながら、サービスを提供しています。
――事業ということは、NPO法人として有料のサービスを展開されているということでしょうか?

そうですね。NPO「Not-for-Profit Organization」(非営利団体)という言葉から、日本では NPO=ボランティア団体の延長もしくは政府からの補助金で成り立つ組織というイメージが広く浸透しているせいか、無料サービスのイメージでお問い合わせをいただくこともありますが、フローレンスが提供しているのは「保険共済型」の病児保育サービスです。月会費を払っていただき、必要なとき、つまりお子様が病気になったときには、無料もしくは格安でお子様をお預かりするというしくみです。
――NPOの代表をされる前は学生でITベンチャーの経営者を経験されていらっしゃいますが、そのITベンチャーはご自身が立ち上げられたのですか?
いや、2002年、当時まだ大学3年生だったある日、大学の後輩から、会社の経営に興味がありませんか?と誘われ、ITベンチャーに参画しました。最初はわからないことだらけでしたが、とにかく見様見真似でがむしゃらにやっているうちに、売り上げも上がるようになってきたという感じです。学生の僕が、大企業の偉い人にプレゼンテーションをして大きな仕事がとれたりするという経験は、自分が特別扱いされているような気分にさせてくれました。
――経営されていたITベンチャーは軌道にのり、事業もどんどん拡大されていかれる中、そのまま企業の経営を続けようとは思われなかったのでしょうか?
社長として活動し、人脈もひろがっていく中、20歳代後半の起業家の先輩方と交流すると必ず「IPO(株式公開)」という言葉が出てくるんです。2003年というと、新興ITベンチャーが株式を公開して、若くして多くの資産を築き上げるというのがある種ブームにもなっていました。一方、僕は「IPOって何ですか?」と質問し唖然とされたこともあるくらいで、そもそも会社をIPOしようとは思っていませんでしたが、IPOを目標に着々と準備を進めるまわりの起業家に影響され、「自分は会社をどうしていきたいのだろう?」と考えるようになったのです。
――いろいろと考えられた末に、NPOへの転進を決められたということですね。
はい。お金持ちになって華やかな生活に憧れがないというと嘘になるのですが、がむしゃらに働いて、IPOして、当時の流行語にもなった「六本木ヒルズ族」になることが夢なのか・・・?と考えるうちに「自分のやりたいことは何なのか?」と自分自身の気持ちを整理したくなって、温泉にこもりました。一人になって、自分自身に向き合って、じっくり考えた末にたどり着いた結論が「社会のためになることをやりたい」ということでした。言葉にするとすごく恥ずかしいのですが、いろいろ考えて、「日本社会に役立ちたい」と思っている自分に気づかざるを得ないというか。。。
――世の中「社会のためになること」はいろいろとあると思いますが、NPOで活動されようと思われたのはどうしてですか?

最初、社会のためになること=ボランティア活動だ!とひらめいたのですが、すぐに、自分自身の中でボランティアは職業にはならないだろうという結論を出していました。どうすればいいのかわからず、パソコンの検索画面で関連がありそうなキーワードを入れてみたらアメリカのあるNPOのホームページにたどり着きました。驚いたのは、そのホームページはサイト制作をする自分たちの会社のホームページよりも格好いい!さらに調べていくうちに、アメリカのNPOは「運動によって社会問題を解決する」という姿勢から「事業によって社会問題を解決する」ソーシャルエンタープライズ(社会企業)にシフトしているということを知ったんです。
――事業によって社会問題を解決する「社会起業家」ですね。
はい。これなら、2年間、会社経営をやってきた僕にもできる、いや僕だからこそできることだ!と確信しました。が、社会の問題で事業を解決する!と思い立ってみたものの、何の問題を解決しなければいけないか・・・ということで僕の頭の中はいっぱいになりました。
――現在、「病児保育」の問題を解決するための活動をされていらっしゃいますが、当時、結婚されていない、お子さんもいらっしゃらない駒崎さんが「病児保育」に着目されたのは何か理由がありますか?
僕の母親がベビーシッターをしていて、その依頼主が子どもの病気を看病するために会社を長めに休んだら解雇されたという話を聞いたのがきっかけです。熱のある子どもを看病することは当たり前のことなのに、どうしてだろうと思いました。それをヒントに「病児保育」のニーズや実態を調査することからはじめていきました。
――フローレンスの事業は‘05年からスタートされていますが、準備期間は順風満帆だったのでしょうか?

いえいえ。いろいろなことがありました。そもそも、結婚もしていない、子どももいない僕が「保育」の問題に取り組んでいるということで、なかなか理解が得られない。
事業化にはいたらなかったのですが、以前、商店街の空き店舗を利用した「商店街病児保育」というのも考えたことがあります。地元の商店街や小児科医などもろもろ順調に準備が進み、あとは施設を整備するだけという段階で区からの助成金が得られなくなってしまい、計画もストップとなってしまいました。かなり落ち込んでいた僕に、僕たちを支援してくれている団体の代表からの「本当にやりたいことは何だったのか?(病児保育問題を解決したかったのか?病児保育の施設を作りたかったのか?)」という一言に励まされ、今のフローレンスのモデルにたどり着きました。
――「日本社会に役立ちたい」という想いでITベンチャー企業からNPOへ転進、駒崎さんご自身の目的は達成されましたか?
はい。経済的に成り立ち、かつ、人の助けになるようなそんなビジネスモデルを作りたいと思ってはじめたのがフローレンスです。サービスの利用会員の方からお礼や励ましのメッセージをいただくと、本当によかったと思います。これからも、経済的に自立し社会のインフラとして機能できるNPOを目指していきたいと思うとともに、僕にできることはまだまだあると思っています。
社会的問題を事業によって解決するソーシャルベンチャーという概念は、日本ではまだ生まれたばかりであり、自分たちがパイオニアでありたいと語る駒崎さん。座右の銘はガンジーの言葉「あなたが見たい変革にあなた自身がなりなさい」と話される駒崎さんに、後編では働き方を変えること(「働き方革命」)で見えてきた世界についてお話しいただきます。
by ニフティ「想い伝え隊」高沢、宮坂
関連サイトの紹介
●NPO法人フローレンスのホームページ
http://www.florence.or.jp/
●Days like thankful monologue
病児保育のNPO法人フローレンス代表 駒崎弘樹のblog
http://komazaki.seesaa.net/
関連書籍の紹介
駒崎さんの著書および関連書籍をご紹介します
![]() |
働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 |
価格:700 円(税込) |
|
「社会を変える」を仕事にする~社会起業家という生き方~ |
価格:1,470円(税込) |
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あなたには夢がある~小さなアトリエから始まったスラム街の奇跡 ビル・ストリックランド著 ヴァンス・ローズ著 駒崎 弘樹訳 |
価格:1,680円(税込) |
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