「日本社会に役立ちたい」という想いでITベンチャー企業からNPOへ転身、経済的に成り立ち、かつ、人の助けになるようなそんなビジネスモデルを作りたいと、病児保育問題の解決に取り組むNPO法人フローレンスの代表として活躍される駒崎さん。後編では自らの体験をもとに、働き方を変えること(「働き方革命」)で見えてきた世界についてお話しいただきます。
――フローレンスには「病児保育事業」の他にも「働き方革命事業」「伝える変える事業」を展開されていらっしゃいます。「働き方革命事業」や「伝える変える事業」というのは名前からすると病児保育と関係がなさそうに思えるのですが、それぞれどのような活動をされていらっしゃいますか?
「病児保育事業」は「子どもが病気になったときの預け先がない」という問題を解決するための対処療法です。問題には常にそれを生み出してしまう構造があって、対処療法だけでなく、構造から変える必要があると思います。「子どもが病気になったときの預け先がない」という問題の裏には「子どもが病気でも休むことの許されない会社や働き方」という構造があり、そこを変えようとしない限り、いつまでたっても問題は解決されません。「働き方革命事業」では、仕事と子育ての両立が「当たり前」の社会になるような働き方を提案しています。
――つまり、世の中のしくみを変えていこうという取り組みですね。「伝える変える事業」というのはどういう活動ですか?

「待機児童」は、認可保育所への入所を希望するけど、入所できない小学校就学前の児童というのはみなさんすでにご存知だと思いますが、「病児保育」というのは、まだまだ保育の中ではマイナーなことで、言葉自体を知らない方も多いと思います。
フローレンスの活動をどんどん広めることで、「病児保育」という言葉も知ってもらい、社会問題のひとつだと認識してもらうことは、とても意味のあることだと思っていますまた、あわせて「病児保育」、もっと広く言うと「子育て」をポジティブにとらえてもらうようなメッセージを発信することで、「子育て=楽しい」というような社会の「ノリ」ができるといいかなとも思っています。
――「働き方革命事業」の紹介ページには、駒崎さんご自身やフローレンスのみなさんの経験をもとにした、働き方改革のためのノウハウを公開されていらっしゃいます。“革命前”の駒崎さんは現在のように定時退社経営者ではなかったということですね。
そうですね。
当時は、ITベンチャー時代に負けず劣らず、仕事Onlyの日々を送っていました。NPOを起業して食っていけるようになって日本のNPOに対する認識を変えてやろうじゃないかという思いが僕を支えていたので、仕事のために常に忙しくても全く苦ではなく、むしろ、忙しいことに誇りを感じているような有様でした。
今思うと、多忙だったゆえに、社内のコミュニケーションが減り、不機嫌になって、確実に、社内をはじめ僕のまわりの人たちにいろいろな悪影響を与えてしまっていました。
――忙しいことは目標達成のためには当然だとお考えになっていた駒崎さんが、働き方を変えてみようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?
いろいろなことが影響しています。
まずは、身近な友人・知人が仕事に忙殺されてメンタルになったという事実。
そして、フローレンスの優秀な社員が、専業主婦を希望する夫のために退職したこと。「今どき女の人だけが家事をするなんてナンセンスだ」と思いながらも、もし自分が結婚したらと考えてみると、果たして家事や子育てのために時間を割くことができるのか?!・・・全く自信はありませんでした。
いろいろと悩んでいる中、ある方からビジネスパーソン向けのリーダーシップ研修をすすられました。
――そのリーダーシップ研修で働き方を変えるための気づきを得られたわけですね

研修の時期が年末という慌ただしい時期だったのと、当然、仕事に追われる毎日を送っていたので、どうしようか迷ったのですが、自分自身の働き方や経営者としてのマネジメントの仕方、社員の働かせ方をどうすればいいのかという悩みに対するヒントが何か掴めないかという思いで研修に参加しました。
研修では「思い込みをはずして、目標とするライフビジョンを見つけて、目標は必ず具体的にイメージできるような表現にして繰り返し自分にすり込む」ということを教わりました。
――目標とするライフビジョンはすぐに描くことができましたか?
これがかなり大変でした。というか、まずは“自分がなりたい自分”探しからですが、あたらためて個人的なビジョンを設定しようとすると、気恥ずかしいというかなんというか・・・。例えば、そのうちのひとつを紹介すると「私は朝9時~夜6時で働き、十分に成果を出している。そして残った時間はライフビジョンの実現のために投資し、そのプロセスにいつもワクワクしている。」なんか、自己啓発野郎の台詞ですね(笑)
研修で習ったとおり、自分が設定したビジョンを繰り返し見られるよう、僕は、自分宛てにこれらのビジョンが毎日メールで届くようにしてみました。
――細かくライフビジョンを設定したら、あとは実行ですね。
研修から戻って、この9時~6時を実行してみました。まずは、使える9時間から、会議などの時間を差し引いて、残りの時間の中で何をすべきか考える。これをやらなきゃマズいっていう仕事、つまりそれが、僕がしなければいけない仕事。僕はとにかく、やらなければいけないと決めた仕事を終え、6時に会社を出ました。なんか、やり残したような不思議な感覚がありましたが、「困った、助けてください」という電話もメールも一切ありませんでした。定時退社を試みて、仕事のやり方を効率化できた上に、時間と心に余裕を持つことができました。
――駒崎さんの定時退社に対する社員の方の反応はいかがでしたか?
特に何もありませんでした。むしろ、僕が定時でいなくなると、まわりにも帰りやすい雰囲気が生まれたようです。
僕は、自分自身の仕事の効率化にトライし、うまくいけばまわりの社員にもやってもらうというような感じで働き方革命を社内にどんどん広めていきました。そうしていくうちに、社員の仕事の効率化はもちろん、気持ちに余裕のできた自分と社員とのコミュニケーションがよくなるというようないい面が見えてきました。
――「働き方革命事業」として提案している「働き方.net」は、そういった、ご自身や社員の方の経験から生まれたノウハウなんですね。

はい。働き方革命に書いてある施策を試す前までの僕は、闇夜の泥道を這うようは働き方をしていたように思います。ゴールがどこかわからないけど、とにかく前進しなければという気持ちで、闇雲に動き続ける。そういう働き方は疲れるけどなかなか前へは進まない。
働き方革命で、効率化を図った今のやり方は、晴れたハイウェイを車で走るような感覚です。時々はガソリンスタンドに寄って、燃料を補給し、ゴールまで故障しないかどうかチェックしながら進む、そういう感じです。
――リーダーシップ研修では、働き方だけでなくライフビジョンを描かれたと思いますが、その他のライフビジョンはどうなりましたか?
もちろん、それぞれのライフビジョン実現のためにアクションを起こし、前進しています。ライフビジョンを設定するときに気づいたのですが、「働く」にはいろいろな意味があると思います。職場での「働く」、家庭での「働く」、自分を含めた地域や社会での「働く」。それぞれの「働く」で自己実現できるし、それぞれがとても楽しいと思っています。
働くことを、プライベートも含めて他社に価値を与える(傍を楽にする)ことすべてを「働く」と考えて、「働く」スタイルをどんどん変えていくのが、本当の「働き方革命」なんですとお話しされる駒崎さん。「働き方革命」のために、まずは自分自身を見つめ直し、どういう自分になりたいのかを考えることが大切だと思いました。貴重なお話をありがとうございました。
by ニフティ「想い伝え隊」高沢、宮坂
関連サイトの紹介
●NPO法人フローレンスのホームページ
http://www.florence.or.jp/
●Days like thankful monologue
病児保育のNPO法人フローレンス代表 駒崎弘樹のblog
http://komazaki.seesaa.net/
関連書籍の紹介
駒崎さんの著書および関連書籍をご紹介します
![]() |
働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 |
価格:700 円(税込) |
|
「社会を変える」を仕事にする~社会起業家という生き方~ |
価格:1,470円(税込) |
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あなたには夢がある~小さなアトリエから始まったスラム街の奇跡 ビル・ストリックランド著 ヴァンス・ローズ著 駒崎 弘樹訳 |
価格:1,680円(税込) |
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