本文へジャンプします。


RSSを表示する



Vol.09 鹿嶋真弓さん(後編) 『構成的グループエンカウンター』でクラスの絆をつくる

子どもたちの「人間関係形成力」の育成に力を注がれている鹿嶋真弓さん。授業の中に積極的に取り入れられているという『構成的グループエンカウンター』とは、どのようなものなのか?子どもたちの反応や変化などについても詳しくお話を伺いました。

--クラスの絆をつくるために、『構成的グループエンカウンター』という手法を授業に積極的に取り入れられていると伺っておりますが、『構成的グループエンカウンター』とは、どのようなものですか?

構成的グループエンカウンター(SGE:Structured Group Encounter)は、國分康孝先生(東京成徳大学副学長、日本教育カウンセラー協会会長)が開発された手法で、現場では,子どもたち同士のコミュニケーションのきっかけをつくり、人間関係を深めるために活用しています。自分の思考や行動の修正・拡大をしていく時、行動と感情と思考の3つのどれかのスイッチを押すことで何かしらの気づきを得ることができます。構成的グループエンカウンターでは、まず自分の感情に気づくところからスタートしていきます。「ワクワク」「ウキウキ」「ドキッ」といった感情から、その時どう思ったか?どんな行動をしたか?ふりかえりながら自己発見していきます。

--授業の中に取り入れようと思ったきっかけは何だったのですか?

教師として自分の心の偏りに気づくことが大切
【教師として自分の心の偏りに気づくことが大切】

私は大学の時、構成的グループエンカウンターを國分先生から学びました。当時は教育現場というよりも、先生やカウンセラー、医者や弁護士といった、人とかかわる仕事をする人たちは自分の心の偏りや癖を知っているほうがいい、ということで学んだのです。例えば、明るい子は好きだが暗い子は苦手な先生がいたら、教師側の好みによって子どもへの言葉かけが多かったり少なかったりということが起きてきます。教師の対応に差があれば、子どもたちは素直に学べなくなりますよね。だから、教師として自分の心の偏りに気づいていれば子どもたちを傷つけなくて済むかなと思って構成的グループエンカウンターを勉強していたんです。

--構成的グループエンカウンターを使うとクラスにどんな効果が現れますか?

クラスの中に絆が生まれてきて自然体で暖かい雰囲気になりますね。ありのままの自分でいられる。そこにいて、受け入れてもらっているという感じです。安心感と安定感があるような感じがしますね。結果的には、学力との相関も高く、仲間意識、絆ができたクラスは学力も上がるんですよ。

--学力面でも良い影響があるのですね。

そうですね。わからない時に、「わからない」って言っても、誰も馬鹿にしないんですよ。それどころか、「どこがわからないの?教えてあげる」と言ってその子の横に行くと、「私もわからないから教えて」ってほかの子も寄って来る。だから、休み時間には授業でわからなかったところをお互いに教え合うという雰囲気が自然にできています。そして、わかるようになると、「よかったね!」って嬉しそうな顔をしてお互いに喜んでいるんです。“嬉しい”という感情をシェアし合えるのは、すごく素敵だと思います。

--NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介されていましたが、学級崩壊のあった大変な時期もあったそうですね。

子どもたちとの絆ができ始めた時
【子どもたちとの絆ができ始めた時】

以前、荒れていたクラスを持った頃、“先生”と呼んでももらえない時がありました。そういう学級崩壊しているクラスでは、こちらが何をやろうとしても拒否されてしまうので、構成的グループエンカウンターはできないと言われていたんです。でも、「なんとかしたい」という一心で子どもたちに向かっていくうちに、できたんですよね。その時、最初に子どもたちが興味を示したのは、『エゴグラム』でした。あれは自分の内面と向き合うエクササイズなので、教師とは向き合わなくていいんですよ。人間誰でも「自分って何?」って、知りたいじゃないですか。だから、エゴグラムの質問用紙を配った瞬間に、「はい」「いいえ」に○を付け始めたの。彼らにとっては、占いのつもりだったのかもしれませんね。

--その時の子どもたちの反応はどうでしたか?

まず子どもたちにエゴグラムの形を聞いてみました。「M型の人、いる?」って。すると、5~6人が手を挙げたので、「M型の人は親分肌だから、困った時はこの子たちのところに行こう!ちなみに私もM型だから、よろしく!」って言いました。その中にはクラスでやんちゃな子もいたのですが、「そっか」っていう感じでお互いに顔を見合わせたりしていました。そうすると今度は、「先生、W型は何?」とか聞いてくるんです。私のことを自然に“先生”と呼んだんですよ~。先生って呼ばなきゃ答えてもらえないと思ったのか、答えてくれる人が先生なのか、私を先生と認めたのか…とにかく子どもたちは、私を“先生”って呼んだんですよ(笑)。

--『エゴグラム』のエクササイズには、どんなねらいがありますか?

『エゴグラム』は、自分の心の癖に気づくことで、“なりたい自分”に思いをめぐらすことができます。以前私の受け持ったクラスの子で、周囲からの人望は厚いが、いまいちリーダーシップを発揮できない学級委員がいました。そのクラスで『動物エゴグラム』(※1)を実施した時、彼は『ニコニコライオン』だったんです。学級委員になりたての頃、彼は「学級委員としてリーダーシップが取れるかどうか、すごく不安」と言っていました。でも、エゴグラムの結果のグラフを見ながら、「ここを高めるような行動をすればいいんだよねぇ~。」と頷いていました。その後、彼はいい感じでリーダーシップを発揮し、クラスを引っ張ってくれましたね。

--“なりたい自分”に変わっていったのですね!

他にも、クラスで真面目で何でも地道にやる子なんだけど、言葉数が少なくてあまり目立たない子がいました。『エゴグラム』をやって、今の自分の性格特性と、理想の自分はこうなりたい、というのを書いてきてもらったんです。「自分は本当はもっと、みんなと楽しむようなことをやってみたい。」と書いてありました。子ども心を表に出さない子だったんですね。それが、「なりたい自分」の目標を定めてから、その子は自分を表に出すようになって、クラスを楽しくて温かい雰囲気にしてくれる人気者になりました。本人が一番びっくりしていましたね。「僕はこんなに変わると思わなかった。本当に人は変われるんですね」って。彼は高校に入ったらダンス部に入り、舞台の上で踊ってみんなにも楽しんでもらいたいって言っていましたね。

--他にはどんなエクササイズがありますか?

私が好きなのはトーキングのエクササイズです。とにかく喋ること。子どもたちに「自由に喋っていいよ」と言っても何を喋っていいかわからないので、テーマを決めるんです。そのテーマが6個あれば『サイコロトークキング』というエクササイズができます。サイコロを転がして、1が出たらこのテーマ、2が出たらこのテーマで話そう、と決めておくやり方です。先生が決めたテーマでは話しにくかったら、自分たちで決めてね、って言っています。みんなで決めると、“かかわりの法則”で、より楽しくできるのです。

--内気な子どもでも自分を語れるいい機会ですね。

ポジティブな話題でたくさん話をさせて子どもたちの相互理解を深めさせる
【ポジティブな話題でたくさん話をさせて
子どもたちの相互理解を深めさせる】

テーマには、ポジティブな題材をいっぱい取り入れるようにするんです。『楽しかったこと』、『自分に影響を与えた出来事』、『頑張ってきたこと』、『こんなふうになりたいという夢』、『今一つ望みを叶えてもらえるとしたら何がいい?』など。話すテーマが前もって見えているので、サイコロトークはやりやすいですね。すごろくトーキングと言って、質問が書いてあるすごろくもいいですよ。それから、坊主めくりトーキングと言って、質問が書いてあるカードを裏返して置いておき、めくりながら、そこに書かれたテーマについて話し合う、というのもあります。私のやり方は、まず紙を切って一人に5枚ずつ、みんなに聞きたいことを書いてもらいます。6人グループだったら、合計30枚のカードを裏返して置いて、めくりながら話をしていきます。今、子どもたちが話題にしたいこと、不安なこととか、ちょっと心配なことなど、話したいテーマがどんどん出てくるんですよ。そして、自分の班の30枚のカードが終わると、ほかの班のカードと交換したりしています。これは紙を準備するだけなので、簡単にやることができます。他には、『権利の熱気球』『SOS砂漠でサバイバル』などもトーキングですよね。

--『権利の熱気球』はどんなエクササイズですか?

6人の班で熱気球に乗っているという設定で始めます。飛行中に、トラブルがあって高度が下がってきたため、自分たちが持っている10個の権利のうち、要らないものから捨てていかなければなりません。みんなで話し合って、捨てる順番を決めてください、というエクササイズです。10個の権利には、「自分だけの部屋を持つ権利」「きれいな空気を吸う権利」などがあります。話し合いながら、「私は、“愛し・愛される権利”を一番だと思った」とか「きれいな空気を吸うのが一番大切だと思った」のように自分の考えを述べるわけですね。この時のルールは、「人のことを絶対に否定しないで、なぜそう思っているか話を聞く」こと。自分の考えを語り、人の考えを受け止める。自分はこう思ったけど、あなたの考えも素敵だね、と言って価値観が広がっていく。中学生の頃は、自分のアイデンティティーが構築されるための準備の時期なので、いろいろな価値観に触れながら心を成長させていくことが大切だと思います。

※『動物エゴグラム』については、以下のお知らせをご覧ください。

子どもたちの心の成長を支援していくために、クラスの中に絆をつくる『構成的グループエンカウンター』はとても有効な手法だと感じました。お話を伺いながら、鹿嶋先生の子どもたちへの温かい想いが伝わってきて心が豊かになったように思います。具体的で貴重なお話をありがとうございました。

by ニフティ「想い伝え隊」大空、久保田、有泉

「鹿嶋真弓」さんからのお知らせ


エクササイズご紹介

インタビューの中で鹿嶋先生が実践していたエクササイズについては、以下をご覧ください。

中高生向け動物エゴグラム 動物エゴグラム

鹿嶋さんが、日本交流分析学会 理事長 杉田峰康先生の監修の元で作成された『動物エゴグラム』のWeb版『中高生向け動物エゴグラム』のサイトです。自分や友達・家族の性格の特徴や行動パターンを知り、お互いの違いに気づくことで、自己理解・他者理解の気持ちを高め、友達との友情を深めて信頼できる仲間づくりを図るためご活用ください。


タイプ別! 学級育成プログラム 中学校編 エンカウンターで学級が変わる 「小学校編」
サイコロトーキング
クラスの凝集性を高めるエクササイズとしてご活用ください。
サイコロの目の数に対応する6つのテーマを決めておきます。
【ルール】
1)サイコロをふって出た目の番号のテーマを話す。
2)話し終わったら「以上です。」と言って、話し終わったことを知らせる。
3)トークは1分以内。一人で時間を使いすぎないように注意する。
4)どうしても抵抗のある(話しにくい)テーマについてはパスを認める。

詳しいやり方については、 『育てるカウンセリング実践シリーズ 3  タイプ別! 学級育成プログラム 中学校編』(図書文化 ISBN:978-4-8100-1356-6)や、『エンカウンターで学級が変わる「小学校編」』(図書文化 ISBN:978-4-8100-6271-6)などの書籍をご覧ください。


エンカウンターで学級が変わる part2「中学校編」 権利の熱気球
他の人の価値観に触れさせるエクササイズとしてご活用ください。
【10の権利】
・自分だけの部屋を持つ権利
・きれいな空気を吸う権利
・愛し・愛される権利


詳しいやり方については、『エンカウンターで学級が変わる part2「中学校編」』(図書文化 ISBN:978-4-8100-7282-7)などの書籍をご覧ください。


『構成的グループエンカウンター』のいろいろなエクササイズは以下の書籍で紹介されています。

構成的グループエンカウンター事典 構成的グループエンカウンター事典

価格:6,300円(税込)
ISBN:978-4-8100-4438-6 図書文化(2004)


その他、『構成的グループエンカウンター』に関する研修会やワークショップのお知らせ、およびエクササイズの検索などは、こちらの公式ページをご覧ください。

コメント (1) | トラックバック (0)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/508788/43890718

※インタビュー記事に対して、リンクおよび言及のされていないトラックバックは削除することがありますので、ご了承ください。


コメント

ニフティさんでエゴグラムを始められた理由がこの記事を読ませていただいて、分かりました。

最近リリースされたエゴグラムは、とてもすばらしいと思います。こんな理由が、その背景にあったなんて、ニフティは、すごく先見性のあるビジョンをお持ちですね。

きっと、すばらしい心根の方たちが、経営陣におられるのだと思います。

学校でのいじめの問題は、とても深刻です。これからも、社会のためになる、すばらしい企画をお願いします。

投稿: エゴグラム・ファン | 2009年2月 3日 (火) 08時57分

コメントを書く




コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。