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Vol.09 鹿嶋真弓さん(前編) いじめのない子どもたちが互いに高め合えるクラスをつくるためには?

2007年4月3日放送のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介された中学校教師で教育カウンセラーでもある鹿嶋真弓さん。子どもたち同士が絆でつながり、正しい仲間の作り方を知っていれば、いじめは起きない。そんな心の通ったコミュニケーションを実現するために、教育現場でどのような指導をされているのか、子どもたちが互いに高めあうクラスづくりについてお話を伺いました。

--07年度、文部科学省の「問題行動調査」によると、児童生徒の暴力行為は前年度比で18%増えており、感情をうまく抑制できずに急に暴力をふるうなどのケースが増えているそうですが、“キレる”子どもについて、どう思われますか?

“堪忍袋の緒が切れる”瞬間、あるいは言葉で表現できなくなった瞬間に“キレる”という行動に出てしまうのだと思います。だから、切れてしまう前に、日頃から何でも話せる人、困っていることを語れる相手がいると、感情が閉ざされず、爆発しないで済むのかなと思うんですね。でも、そういう感情を出せるところがないと、自分でも気づかないうちに少しずつ溜め込んでしまって、何らかの瞬間に表に出てしまうのだと思います。普段から、嬉しかったこと、悔しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、辛かったことなど、喜怒哀楽の感情を聞いてくれる人や語り合える人がいるというのが一番だと思います。

--表に出せない感情をブログなどに書き込むことで、ネットいじめなどが起きているのかもしれませんね。

子どもたちはまだ感情をうまく表現できない
【子どもたちはまだ感情をうまく表現できない】

大人でも感情について言葉で表現するのは難しいですよね。子どもたちは、もっとボキャブラリーが少ないわけです。だから自分の中で起こっている感情を表現しようとしても、それをどういう言葉で伝えればいいのかわからなくなるときがあるのかもしれません。ヘレン・ケラーが冷たい水に触れた瞬間、“ウォーター”という言葉と“水”という物質がはじめて一致したわけで・・・。子どもたちは常に言葉を構築しているんだと思うんですよ。思春期の子ども達は、そういう意味でまだまだ言葉が不足していて、今の自分の感情を、どう表現してよいかわからないのでしょう。 例えば、恋した時もね。

--えっ?“恋”ですか?

そうなんです。中学1年生を持っていた時のことですが、ある男の子が私に、「先生、何か僕、最近イライラするんだ」と言ったんです。「何でイライラするの?」と聞くと、「あの子(隣の席の女の子)と話しているとすごくイライラして・・・」って。「どんなふうにイライラするの?」と聞くと、「何かムカムカする。・・・でも何か嬉しいような・・・。この辺が熱くなるっていうか」って、胸のあたりに手を当てて言うんです。絶対に恋してるんですよねぇ~。だけど、それが言葉にならないの。しばらくして、席替えをしたら、今度は「先生、最近すごいつまんなくなって、何か一日が長く感じる」って言うんです。初めて恋した時って、自分でもよくわからないんでしょうね。だから、そういう言葉にならない感情を、一生懸命、私に、「イライラする」とか、「ムカムカする」のように言って伝えていたんだろうなって。

--自分の本当の感情を言葉で表現することが、中学生くらいだとまだできない部分もあるんですね。ところで、“いじめ”はなぜ起こるとお考えですか?

極論かもしれませんが、間違った仲間の作り方をしていることが、いじめの一つの原因ではないかと私は思います。ひとりぼっちは寂しくて、誰かと友だちになりたいんだけど、どうやって友だちや仲間をつくればいいのかわからない。手っ取り早いのが共通の秘密を持ったり、共通の敵を作ったり…という方法です。誰か一人、ターゲットを決めていじめることによって仲間を作ろうとする。誰かをバカにして楽しんで仲間を作るとか、一人だけ仲間はずれにして周りは固まるなど。「みんなで遊んでるだけだよ」って言うかもしれないけれど、「一人でも悲しい思いをしていたらそれは遊びじゃないよね」という話も、子どもたちにはしています。そうやって考えたら、正しい仲間の作り方を知っていればいじめは起きないと思うんですよ。

--過去に受け持たれたクラスで、いじめの現象があったとか、またそれを改善するために何かされたことはありますか?

学校に来られなくなった子どもに対してしたこと
【学校に来られなくなった子どもに対してしたこと】

以前、あることないこと、いわれて不愉快なことをチェーンメールで流された子がいました。その子は携帯電話を持っていなかったんですけれど、わざわざ書いてある内容をその子に見せた子がいたんですね。そういうものを読んだら傷つくわけですよ。結局、一週間くらい、その子は学校に来なかったんです。本当にショックだったのでしょうね。そこで、どんなことが嫌だったのか、つらかったのか、とにかく思い浮かぶことをなるべくたくさん、できれば20個以上ノートに書いてくるよう言いました。例えば、「根も葉もないを言われて悔しい!」とか、「勝手なこと言うな!ふざけるな!」とか、いろんなことが書いてありましたね。そして、次に、その書いた言葉の後に、「だけど」とか「でも」という接続詞を付けて、文章を完成してきてねと言いました。「根も葉もないこと噂を書かれてふざけるなと思った。だけどそれは根も葉もないことだから気にすることはない」とかね。「だけど」という言葉によって、文章が逆説になるので、嫌なことから思考を変える、みたいなことをやったんですよ。そうしたら、全部の文章を変えてくれて・・・。それを二人で読みながら話をしているうちに、自分自身で一生懸命、受け止め方を変え、どうにか学校に来るようになりました。

--とても効果的なやり方ですね。それとは逆に、周りの子どもたちに対してはどのような対応をされましたか?

まず一つは、“寝てた子を起こした”わけですよね。そもそも携帯を持っていない子にわざわざ「携帯のチェーンメールで悪口書かれているよ」なんて言われなければ、その子も見なくてすんだわけだから。「これは酷い書き込みだ」と思ったら、なぜ、そこで削除して、「ふざけるなよ。こんなこと書くのは失礼だぞ。」って言い返さなかったのか?結局、間に入った子は、その子のことが“かわいそう”と言いながらも、実は面白半分で「こんなこと書いてあったよ」と言ったわけです。ですから、「そういうあなたの行動は、優しい気持ちから出たものなの?それとも意地悪な気持ちから出たものなの?」と聞くと、「意地悪な気持ちがあったかもしれない」って言い始めるんですよね。

--自分で気づき始めるのですね。

子どもたちが自分で気づくことが大切と温かくお話された鹿嶋さん
【子どもたちが自分で気づくことが大切と
温かくお話された鹿嶋さん】

人の言葉は、表面的には同じでも、相手に対して本当に優しい気持ちで言っている言葉と、意地悪な気持ちで言っている言葉があるんですよねぇ。同じ言葉でも本当に優しい気持ちで言う言葉なら、相手もきちんと受け止めてくれるんです。授業中に、「前向けよ」と注意するにしても、意地悪な気持ちで言ったらば、自分が優位に立って上から下にものを言うみたいに聞こえるかもしれないけれど、その人を本当に想って言ってあげれば、「あぁ僕のこと考えて言ってくれたんだ」と思って、その人の気持ちを受け取りやすくなるんですよね。だから、注意する人には、自分の心の中に、どっちの気持ちがあったのかを自分で振り返ってごらん、という話をするんです。それは私も一緒で、生徒に話すときに、「こらしめてやろう」と思って発した言葉だと、私も傷つく。でも、「本当にあなたのことを考えて言っているのよ」の気持ちから出た言葉は、どんなにきつく叱っても子どもたちは素直に受け取ってくれるんですよね。ですから、子どもたちには、「これは、私もいつも我が身を振り返り考えること。だからみんなも考えてね。」って言っています。

--そうやって気づいていくことで、子どもたちは成長していくんですね。

そうですね。子どもたちの言葉遣いの中で、“意地悪な気持ちから出た言葉”なのか“優しさから出た本当の気持ちだから受け取って、という想いで一生懸命言う言葉”なのかということを考えるのは、ブレーキをかけなくちゃいけない時に効いてくるんですよね。“意地悪から出た”と自分で思ったならブレーキをかけるようになるし、“心から出た言葉”だったら、「ちょっと言いすぎじゃない?」と私が思うような言葉でも、子どもたちはちゃんと最後まで言うし、言われた相手もきちんと受け入れる。 そういうことを通じて、絆が深まり、お互いに高め合う心を育てていってるのだと思います。

次回は、クラスの絆をつくるために、鹿嶋さんが授業に積極的に取り入れられている「構成的グループエンカウンター」という手法について、どのようなものなのか、そして具体的にどんな授業をされているのか、などのお話をお聞きします。

by ニフティ「想い伝え隊」大空、久保田、有泉

「鹿嶋真弓」さんからのお知らせ


書籍とDVDの紹介

鹿嶋さんが共同で編集された書籍を紹介いたします。

Q-U式学級づくり 中学校 Q-U式学級づくり 中学校
脱・中1ギャップ 「満足型学級」育成の12か月

価格:2,100円(税込)
ISBN:978-4-8100-8529-7 図書文化(2008)


構成的グループエンカウンター事典 構成的グループエンカウンター事典

価格:6,300円(税込)
ISBN:978-4-8100-4438-6 図書文化(2004)


育てるカウンセリングによる教室課題対応全書3 育てるカウンセリングによる教室課題対応全書3
非行・反社会的な問題行動

価格:1,995円(税込)
ISBN:978-4-8100-3395-3 図書文化(2003)


鹿嶋さんが出演・紹介されているDVDを紹介いたします。

NHKプロフェッショナル「仕事の流儀」 NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」
第3期 中学教師 鹿嶋真弓の仕事
人の中で 人は育つ

価格:3,675円(税込)
商品番号:11508AA NHKエンタープライズ(2007)

DVDの内容についてはこちらをご覧ください

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