前編では「パパ's 絵本プロジェクト」のことを中心に伺いました。安藤さん曰く『絵本は子どもと会話のキャッチボールを楽しむコミュニケーションツール』とのこと。絵本を通して、子どもの反応をみたり、日々の成長を実感したり、安藤さんご自身が一番楽しまれている様子。後編では、安藤さんに育児を楽しむための働き方など、ワーク・ライフ・バランスのことを伺いました。
--「パパ's 絵本プロジェクト」を見た人の感想として「安藤さんたちが一番楽しそう」とよく言われるそうですね。
「パパ's 絵本プロジェクト」を経て、2006年に「ファザーリング・ジャパン」を設立されましたが、どのようなきっかけで設立されたのでしょうか。

僕が「ファザーリング・ジャパン」を作ろうと思ったのは、絵本ライブのときに笑わない子どもがいるということでした。「パパ's 絵本プロジェクト」で子供たちと絵本ライブをしているとき、大勢の子どもが笑っているのにまったく反応しない子どもが必ず一人か二人いるんですよ。よく見ると、その後ろに笑わないお母さんと笑わないお父さんが必ずセットでいるんです。つまり、笑わない子どもというのは現象に過ぎず、その現象を起こしている構造を変えなければ、絶対この子どもたちは変わらないなぁと思ったんです。もし、虐待されている子どもがいれば真っ先に保護しなければいけないけど、自分の中で感情をため込んでいる子どもも、同じように救ってあげなければいけない。それはくすぐって笑わせたりすることではなく、その子が笑いを学んでいない家庭をどうするかというのを考えなければいけない。ある意味、子育て支援というのは親育てをしなければいけない。未熟な人、いわゆる子どもが子どもを育てる状況になっている。だから子どもがおかしくなっちゃう。会社の忙しさに流されたり、母親に押し付けたりせず、父親は責任をきちんと自覚して、子どもと触れ合う時間を作り、コミュニケーションをとることが大事なんです。
--著書の中で、時間は「つくる」ものと書かれていましたね。
日本は残業時間が世界一長くて、労働生産性は先進国で最下位。いかに効率の悪い働き方をして、その影で犠牲になっている家族がいるかですよね。これまで右肩上がりで経済成長してきましたが、これ以上本当に成長できるのかなぁと思います。僕は、これからは、健全なゼロ成長でいいと思います。あんまり急激な落ち込みはよくないけど、健全なゼロ成長の中で人々が笑って暮らせる持続可能な豊かな社会を作るのが大人たちの役目だと思う。特に父親は、そういう意識を持って、自分の仕事の働き方とか、家庭生活とか、地域活動をやっていけばおのずと、解決の糸口が見えてくるのではないかと思っています。
--「ファザーリング・ジャパン」の目標は、仕事も子育ても社会活動も趣味もすべてひっくるめて人生を楽しむ「笑っている父親」を増やすことなんですよね。それは、例えば、子育てを楽しむ父親同士が交流を持ち、父親による地域活動が広まる=(イコール)住みやすい町が広がっていくということでしょうか?

そうですね。子育てが幸せな町というのは高齢者や障害者にとっても優しい町になりますね。そういうインフラが出来るということですからね。例えば、会社勤めてしている人で子どもが生まれてくるとき、マンションを選ぶ基準として、そこの地域が子育てに良いからという基準ではなく、通勤が楽だから、ちょっとおしゃれな町だからという理由が多いと思うのです。そこをもっと違う視点で見て欲しい。例えば、保育園が充実してとか、児童館がいっぱいあるとか、子どものそういう居場所がたくさんあって子育てがしやすい町。どうせなら安心、安全で子どもを育てられるそんな町に住もうよ、みたいな。これからはそんな風になっていくべきだと思うんです。今までは、下水道などが整っているとか、道路が整備されているとか、学校や病院が近くにあるとか、公園、図書館などが充実しるとか、ハード中心の基準で、地価が上がっていただけど、これからは変わっていくと思います。その地域のコミュニティーがすごくヒューマンコンシャスなエリアになっているとか、子育てのネットワークがあるとか。もっとソフト中心が基準になる。小学校でいえば地域と密接につながっているコミュニティースクールみたいのが活発に行われているかとか。子育ては町育てですからね。子育てをすると町にも貢献できるということもあって。それもファザーリングのひとつの醍醐味だよって僕たちは言っています。家の中だけで良いパパを目指すのではなくて、地域社会でも父親を発揮しましょうって。もっとお父さんが地域の人たちとつながって、それで地域の子どもも一緒に覚えてもらえばいいんですよ。「あぁ、あそこの家の子だね」って商店街の人たちがわかっていれば、お父さんが会社へ行っているときもみんなが見守ってくれるんですよ。例えば、同じマンションに住んでいるのに隣は誰かわからないというより、同じマンションでもつながっていた方が楽なんですよ。僕は、今年赤ちゃんが生またとき、立会い出産で病院に行きました。上の子ども二人をどうしようっていうことになったとき、同じマンションに住んでいる小学校つながりの友人が預かってくれました。そういうつながりがなければ、実家から飛行機で親を呼んだり、あるいはベビーシッターを雇わなければいけなかったり。本当に余計なコストがかかって、そのコストを稼ぐためにお父さんは長時間労働となって・・・。遠くの親戚より近くの他人というか、そういうコミュニティーのあり方をもう一度見直しませんか?というひとつの提案です。
--ところで、ファザーリング・ジャパンを設立される前、父親支援の海外事情を調査されたそうですが、日本が参考にすべき国や地域などありましたら教えてください。
ファザーリング・ジャパンのプランを考えていたとき、カナダの父親支援プロジェクトの責任者であるティム・パケット氏のセミナーを聞き、まったく同じことをやっているなと思って、すごく参考になりました。セミナーの後、彼と話しをして、彼から「日本でも当然必要ですね。安藤さんがやろうとしていることはグレートワークになるだろう」と言ってくれました。また、海外のサイトを見たりしていると、お父さんの役割というのはどこの国も同じなんだなと実感しました。カナダ以外で言うと、北欧が先進的なので、スウェーデン、ノルウェー、デンマークのそういう文献は読んだし、最近ではドイツがすごく真剣に取り組んでいます。ドイツは日本と同じように、子どもは家で母親が育てるものだという意識が強かったのですが、数年前に、北欧のパパクォータ制に近い育休法を導入し、男性飲取得率が高まりました。パパインステュートというファザーリング・ジャパンと同じような活動をしている団体があったり、そういう動きは日本よりも活発なので注目しています。
--今後、「ファザーリング・ジャパン」ではどのような活動を計画されているのでしょうか?
父親の役割って、子どもの年齢によって変わっていくんですよ。僕らがいま中心にやっているのは、プレ(出産前)と0~6歳ぐらいまで。パパ検定もそこが対象なんです。やっぱり一番大事なのは乳幼児期。スキンシップやコミュニケーションは、週末だけでなく、日々やることによって親子の信頼関係、ベーシックトラストと言いますが、それを築ける環境づくりであったり、意識改革が大切になってきます。それは父親の役割からすると、保育者の役割というのかな?お母さんもそうですが、未完成な赤ん坊や乳幼児を育てるという役割が大事なんです。また、小学校の高学年くらいになると、これから先の思春期は保育者ではなく、マラソンの伴走者なんです。あるいは、よき理解者になっていくんです。今、パパ検定は乳幼児編をやっていますが、思春期における親子のコミュニケーションのあり方を検定にするプランがあります。思春期に関しては、普段あまり接してこなかったお父さんが子どもの異常に気づいたときは、ほとんど手遅れですね。そのような状態になったとき、子どもだけをどうにかしようというのは無理。そのときは、家族を全員呼んで、全員カウンセリングしなければ絶対に治らない。その状態になるまでの過程で、愛情を受けていない、自己を肯定する力を持っていない子どもたちが非行に走ってしまうんです。つまり、たまにしか会っていないお父さんが、気づくときはもう遅い。毎日一緒にいるお母さんは、本当は気づいているはずなのに、夫は不在だし無関心だから伝えても仕方ないと思ってしまう。今、中高生で引きこもったり、荒れたりするのは、父親の不在と母親の過干渉がセットになっています。だから父親が小さい頃から関わることで母親の育児負担や不安も軽減できるし、子どもは父親からいろいろ社会のことなどを学べるし、父親の役割はものすごく重要なんですよ。やっぱり、子どもは大人を見ているんですよ。子どもが「大人になるのも悪くないな」って思わさせるのが大人の仕事だと思います。それがないから今はニートが増えてるんじゃないでしょうか。引きこもり100万人、ニート62万人、不登校13万人。そして自殺者が年間3万人。なんでこんな国になったんでしょうね。
--大きくとらえるとやっぱり社会が変わる活動ですよね?
父親が世帯数の数だけいるとしたら3,000万人くらいはいるはず。彼らは家庭の中だけでなく、企業や地域でいろいろな力を持っているはずです。父親として「次世代を育成する」という意識を持って仕事に臨めば、社会は変わっていくと思います。そういう哲学を持った「かっこいいパパでいようよ」というのがFJ(ファザーリング・ジャパン)のメッセージですね。
前編・後編を通して、父親として、我が子も含めて次世代を育成しようという意識を持てば「家庭」だけでなく「地域」や「企業」さらに「社会」が変わっていくということが心に響きました。仕事に忙しいという理由で母親に育児を押しつけず、積極的に父親を楽しもう!ということをブログを通して伝えることができればと思っています。
by ニフティ「想い伝え隊」宮坂、小出、浦田
安藤さんより、小渕優子さん(内閣府特命担当大臣 少子化対策・男女共同参画)とお会いした話を伺いました。その懇談会の様子が安藤さんのブログに掲載されています。また、小渕さんの「小渕のアクティブブログ」(活動日記)でも紹介されています。ぜひ、こちらもご覧ください。小渕さん、安藤さんのブログは次の通りです。
「小渕のアクティブブログ」:http://www.gender.go.jp/column/index.html「Fathering Japan 活動日記」:「優子の部屋へ」(10月15日)
著書の紹介
「NPO法人 ファザーリング・ジャパン」の代表をされている安藤さんの著書を紹介いたします。
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パパの極意 仕事も育児も楽しむ生き方 |
価格:735円(税込) |
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ぼくとおとうさんのテッド(トニー・ディテルリッジ作 安藤哲也訳) |
価格:1,575円(税込) |
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絵本であそぼ!(共著) 子どもにウケるお話し大作戦 はじめて出会う育児シリーズ |
価格:1,260円(税込) |
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子育てパパ力検定(共著) 公式テキスト&問題集 |
価格:1,260円(税込) |
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