NPO法人「ファザーリング・ジャパン」の代表として、父親の育児に関するセミナーや講演などを全国各地で精力的に活動されている安藤哲也さん。これまで出版業界で活躍され、お子様の誕生を機に絵本好きのパパ友で立ち上げられた「パパ’s 絵本プロジェクト」では、約4,000人の子どもたちに絵本を読んでこられました。2006年にはNPO法人「ファザーリング・ジャパン」を設立され、父親の育児支援やワーク・ライフ・バランスに取り組まれています。その安藤さんに父親の子育てについてお話を伺いました。
--安藤さんが積極的に子育てをしようと思われたきっかけを教えてください。
11年前に僕は父親になりました。やるべき、やらなければいけないという義務ではなく、子育てはきっとチャンスに違いないと思いました。それまでは、仕事一辺倒で、ワーカホリックのサラリーマンをずっとやっていました。35歳のときに子どもが生まれて、主体的に子育てをしていく(自分自身が車で言えばエンジンのようにやっていく)にはどうすればいいだろうかと考えて、自分なりのワーク・ライフ・バランスをとってきたという感じです。
--子育てはチャンスということですが、お子様が生まれる前は子育てについてどのように考えられていましたか。

20代のときは、子どもが嫌いでした。電車とかで騒いでいると「ちっ」というタイプでした。もっとさかのぼれば、自分自身が育った家庭環境があって、僕の父親は、昭和 3年生まれで、今年80歳になります。非常に堅物というか、その頃はどこの家庭もそうだと思いますが、男は仕事、女は家庭(家事)という、いわゆる男女の古い役割分担の意識が強くて、例外なく私の家もそうでした。思春期の頃かなぁ、小学校5年生、10歳くらいのとき、ジョン・レノンのアルバムと出会って、「ラブ&ピース」の世界に魅了されました。そしてジョン・レノンは僕の理想の父親像として、僕の意識の中に刻み込まれました。将来、結婚して所帯をもったらこういう夫でいようとか、こういう父親でいようという理想像をぼんやり思い描いていました。ただ、大学に入って就職して社会に出てからはそんなことは全く覚えていなくて、20代の頃は仕事ばかりしていました。30代で子どもを授かって、子育てというのは今までと「ちょっと違うぞ」みたいな意識があって、生半可な気持ちで対応してはいけない。どっしり受け止めて、自分なりに楽しめればいいなぁ。まさにチャンスだなぁと。それと同時に20代のときの意識を強引にギアチェンジしないといけないなぁと思ったのです。
--強引なギアチェンジですか? 20代のときの意識を急に変えるのは大変だったのでは?
大変でしたね。一日や二日では無理でした。例えば、夫婦喧嘩をしたとき、昔、父が母に対して言っていたことと同じことを自分自身が言っていました。その瞬間、あっ!これって自分があんなに嫌がっていたことを、いまなぜ自分の奥さんに言っているのだろうと。僕は「OS」と言っていますが、擦り込みというか、育った環境というのは、ものすごく強いんだなぁと実感しました。繰り返さないように思っていても、ちょっとした喧嘩のときに、私の父親の「OS」が出てくるんです。全く育児に関わって来なかった父親の「OS」があるから、育児とか育児と一体化した家事というのは、母親がやるものだというものが心の奥にあって、たまに表に出るときがありますね。それをそうじゃないと打ち消しながら、それを乗り越える作業をやって克服していった。僕は「父親は一日にしてならず」とよく言うけど、今まで全く家事をやってこなかった男性、そういう家庭で育った男性がいきなりすぐにスーパーパパにはなれないです。僕も思い起こせば、今も発展途上であるけれども、そういう境地までいけるようになるには5~6年くらいかかっています。
--はじめからスーパーパパにはなれないので、ちょっとずつ・・・
講演やセミナーでも言っていますが、急にはスーパーパパになれないから、自覚していることがあれば、そこを改善する努力をしましょうと。また、ママたちには寛容な気持ちをもって、急にママたちのレベルにはなれないから、うまく褒めて、徐々にパパも育ててくださいと伝えています。ママのパパコーチングも大切だと伝えています。
--ところで、ファザーリング・ジャパンの前身である「パパ's 絵本プロジェクト」のことを教えてください。

これまで自分自身の子育ての中では、絵本というコミュニケーションツールを使って子どもと楽しんできました。長女を授かったとわかった瞬間、その翌日、絵本を100冊買って、娘の誕生を待っていたくらいです・・・。当時、書店をやっていたので、ふと見たところに絵本があって、あっこれだと直感的に思いました。それまでは商品としか見ていなかった絵本だけど、全然違うモノに見えたんです。何が良いとか悪いとか何も考えず、自分で見て、おもしろそうなものを100冊ピックアップしました。書店に勤めていたので安く買えるというのもありまして・・・。生まれてから6カ月くらいかなぁ?子どもも6カ月くらいになると、ページをめくるようになるんですよ。指がつかめるようになって、いっぱしの人間になったなぁと思ったときから読みはじめました。小学1年生終わる頃まで毎晩2冊ずつ欠かさず読んできました。このまえ計算したところ、のべ6,000冊ほど読んで聞かせました。同じ本もたくさん読ませました。そういうのをやっていて、5年前に「パパ's 絵本プロジェクト」を立ち上げました。たまたま仕事で出会った現役のお父さんが、絵本が好きという共通項で飲み屋で盛り上がったのが始まりです。普通、飲み屋でお父さんたちが盛り上がる話題というと、野球のチームかフットサルのチームかバンドなんですが、僕らの場合、それが絵本だった。ネットは、大人しかアクセスできないから、子どもたちと絵本ライブみたいなもの・・・絵本を間において、言葉のキャッチボールを楽しむライブセッションをやるようなイベントをやっていこうということで動き出しました。飲み屋で役割分担(システム部長、営業部長、広報部長)を決めて、サイトも作って、お父さんが選ぶ絵本というのをもっともっと出していきましょう、赤裸々な育児日記も出しましょうと、いろいろなことが決まっていきました。
最初のイベントは丸善の日本橋本店でやりました。そこへ新聞社の記者が聞きつけて取材に来られ、それで新聞にバーンと掲載されたんです。「男と絵本」みたいなタイトルで。当時はそれが非常に珍しいというか・・・それから記事がひとり歩きして、全国から問い合わせがあり、5年経ちましたけど、30都府県、150個所の図書館や公民館、保育園。約4,000人の子どもたちに会うことができた。
--たくさんの子どもの笑顔に接して、喜びと共に活動を続けていこうという気持ちになりましたか?
喜びはありますね。ただ、僕らの活動は絵本の良さを伝えるとか、文化の普及のためという高尚な動機ではなく、ただ単に自分の家で子どもと楽しんだ絵本を外で読むとどうなるかなぁという好奇心です。僕は、バンドもやっていたけど、自分で作った曲を披露したいという気持ちと同じで、名作とかではなくて、自分がみつけ出した絵本を大勢の子どもたちに読んでみると、どんな反応かな?みたいな好奇心があって、やってみると、自分の子どもとちょっと違ったりもするし、笑顔にも出会えるし、いろんなコミュニケーションが成立しておもしろいと思って。
--「パパ's 絵本プロジェクト」の経験より、家庭との違いというか、こうすれば楽しくなるんだとか、こうやれば子どもの反応がいいとか試されたりしましたか?

1対1で読むのと、1対30で読むのは、また違うんですよ。読み方とか。家では、読み聞かせ用の絵本だけではなく、図鑑を見たり、地図を見たり、絵本というお話だけじゃないものもいっぱいあって。なぞなぞの絵本とかもあるし、子どもの年齢によって変わってくるし、だから、笑顔もそうだけど、子どもの成長を実感できるんですよ。毎日読んでいると、同じ絵本でも3カ月前と言っていることが全然違ったりするんです。出てくる言葉とか反応とか。この子、もうこんなことが言えるようになったんだ。というのを日々実感できるんです。僕はそれが楽しかった。だから、今日も仕事を早く終えて、子どもが寝る前に帰ろうと思うんですよ。
--世の中のお父さんたちは、そういうところに気付いていない人が多いのでは?
「パパ's 絵本プロジェクト」は、こうするべきだとかはなくて、僕らはこうやって楽しんできたし、絵本は、成長を実感できるひとつのコミュニケーションツールだよ。ということを言っているんです。
後編では、2006年に設立されたファザーリング・ジャパンの立ち上げや活動内容のこと。さらに、父親支援の海外事情も含めて、これからのファザーリング・ジャパンの展開や計画についてお話を伺う予定です。お楽しみに。
by ニフティ「想い伝え隊」宮坂、小出、浦田
「ファザーリング・ジャパン」のイベントのお知らせ
「NPO法人 ファザーリング・ジャパン」の代表をされている安藤さんより、今後のイベントをご紹介いただきましたので、この場を借りて案内させていただきます。ブログを読まれて、興味を持たれた方はぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。
◆ファザーリングフォーラム◆
日 時:11月6日(木) 19時~21時
場 所:文京シビックホール小ホール(文京区春日1-16-21)
対 象:企業の担当者および一般(定員350名)
参加費:無料
◆ファザーリング・フェスタ◆
日 時:2008年11月8日(土)13:00~17:00(開場12:30)
場 所:東京カルチャーカルチャー(江東区青海1 丁目パレットタウンZeppTokyo 2F)
定 員:100名
参加費:無料
◆FJXテンプスタッフ コラボセミナー◆
~教えて!先輩パパ~共働き・子育て・キャリア・パートナーシップについて
日 時:11月19日(水) 19時30分~21時30分
場 所:代々木かえつビル4階(渋谷区代々木2-22-8)
定 員:40名
参加費:3,000円(一般)
詳細は、ファザーリング・ジャパンのホームページをご覧ください。
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