ナマケモノ的な省エネ、低エネの暮らしを提唱する辻信一さん。後編では、、「スロ-」や「GNH」というコンセプトについてお話を伺いました。
--6月17日に放送されたクローズアップ現代を拝見いたしました。「つながる」がテーマでしたね。

©アースキャラバン実行委員会
いちばん大切なのはつながるってことですよ。つながるには時間がかかります。いっしょにいるには時間がかかる。今のようにみんなどんどん忙しくなってしまうと、つながる暇がないんです。人といっしょにいる暇がない。自分の大切な人―恋人とだって、家族とだって、いつも時間を気にしながらしかつき合えない。「あ、今ちょっと忙しいから」って、だんだん一緒に過ごす時間が優先順位のあとの方になっちゃう。「いつかゆっくりね」と言うけど、たいがい、その“いつか”はいつまでも来ないんですよ。
経済競争ばかり優先していると、しまいに世界全体が早い者勝ちの世界になってしまう。早い者勝ちをルールとすれば、ゲームに参加している以上、人間は必ず加速するでしょ。それによって何が壊れるかっていうと、つながりなんです。
--つながりを失うことと経済的に豊かであること。どっちの世の中が幸せなんだろうかってことですよね?

©ナマケモノ倶楽部
そう、それこそが今、問われている。この前、知り合いが、「いやー、この前、親友と3年ぶりにあって・・・」と言ってた。3年ぶりに会うの人というのは、今でも親友といえるのかな。。。仕事で忙しくて、自分の子供とさえ顔を合わせることができなくなってるお父さんたちがたくさんいる世の中を、僕たちは豊かな社会だと言い続けてきました。そういう意味での物質的な「豊かさ」をはかる指標はGDP(国内総生産)やGNP(国民総生産)です。GNPがあがると、みんなでワーッと拍手してね、GNPがちょっと下がりそうだって言うとみんなでお先真っ暗だと沈みこむ。お先が真っ暗じゃないんです。そんなふうに意気消沈するあなた自体が真っ暗なんですよ。
--経済のしくみが変わればつながりもでてくるのでしょうか?
はっきりいえば全とっかえ。今までは豊かさの経済で、GNPをあげる経済だったんですが、これからは幸せになるための経済っていうのを考えるのです。だから政治家は、どうやってGNPをあげるかとか、国の国際競争力を上げるか、とかを考える代わりに、人々がどうやったら幸せになれるかということを朝から晩まで一生懸命考えて、そのために仕事していただきたいですね。これまでの豊かさの政治から、幸せの政治に大転換する。僕たちも、政治家を選ぶときは、誰が一番私たちの幸せのために貢献してるかという基準で考えればいい。
ブータンの前国王が1970年代に、「GNPより、GNHが大切だ」といったんですが、彼がGNPをもじって、P(プロダクツ)の代わりにH(ハピネス=幸せ)を入れてつくった「GNH(国民総幸福)」こそがもう一つの僕らのキーワードです。やっぱり、「幸せ」という言葉をもう一回真ん中において、すべてを考えなおしてみるときだと思います。
--「GNH」は幸せをはかる新しい指標ですね。経済、経済、経済っていうのが生まれたときからあたりまえになってしまうと、GNHの考え方になかなか気づけなかったりしますが、、、
僕の本のタイトルでもある「幸せって、なんだっけ?」という問いが大切なんです。これまで環境問題とか環境運動っていうと、あれするな、これするなって言われるから、みんなあまり聞きたくない話だと思っていた。そんなことに巻き込まれると、私のもっている「豊かさ」や「幸せ」が損なわれるかのように感じていたんですよ。それは、物質的な豊かさの中にしか幸せはないという思い込みをもっていて、その「豊かさ」に歯止めをかけるようなものには抵抗感を持ったからでしょう。でも、今、はっきりしてきたことは、実は「豊かさ」こそが幸せを壊してきたということです。そして「豊かさ」は同時に環境をこわしてきたんです。だから、「幸せって、なんだっけ」と自問すること、環境問題について考えることとは、裏表の関係にあるんです。僕は、みんながしっかり自分にとって大切なことを選び始め、幸せを自分の手でつかみ始めたら、みんなエコになると思います。
ナマケモノがエコロジカルであるように、人間も本質的にはエコロジカルな存在なんです。もともと破壊的な存在であるはずがないんですよ。自分が本来そうである本質に目覚めさえすればいいんです。
--そのためにはつながることが大切だと思うのですが。つながって一人じゃない自分に気づくことによって、自分自身を客観的に見えるのかなーとも思います。
そう。つながるっていうのも二重に考えたらいいと思う。人間というのは本来、自然の一部で、自然とつながっていなかったらアンハッピーなんです。生物の住んでいるこの星で、何十億年とかけて作られた豊かな自然を享受して生きているわけです。自然界とつながるってことは、僕たちの幸せの基盤であり、土台ですよね。
また、僕たちは、生き物のコミュニティの一員であると同時に、人間たちからなるコミュニティを作って、人間同士がつながることでしか生きられない存在です。誰も一人じゃ生きられない。だから人と人とのつながり、人と自然とのつながりという、この二重のつながりこそが、僕たちが生きるっていうことの意味として欠かせないはずです。
ところが、そのつながりをこわす方向に、それを断ち切る方向に、進歩とか発展とか成長とかを考えてしまった。これは大きな思い違いです。でも、間違ったってわかったときにこそ、それを思い切って変えてみることも可能になる。だから、これは大きなチャンスでもある。ちょっと勇気がいるけどね。ひとつの物語が間違ったんだから、違う新しい物語を作る。思い切ってやってみる価値はあるでしょ。
スローライフのスロー(slow)を、みんな「ゆっくり」って訳すんだけど、ひとことで言い表すとすれば、「つながり」です。スローライフとは、つまり、豊かなつながりを取り戻して、幸せな世の中をつくろう、というムーブメントなんです。つながるのには時間がかかる。だからスローなんです。
今回お伺いしたお話の中で、”いろいろな動物がいますけど、一番暴力的なのは、「弱肉強食」という思いこみにとりつかれた人間ですよ。”とおっしゃった部分がとても心に残りました。豊かなつながりをとりもどしてこそ、ナマケモノのような自然本来の姿に戻れるのだということを痛感しました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
by ニフティ「想い伝え隊」宮坂
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