ストーカーの被害に遭ったことがきっかけでハラスメントカウンセラーの活動を始められた小早川明子さん。危険を伴う加害者ケアをしながらも、活動を続けているその想いとは?また、子どものいじめの心理についてもお話を伺いました。
―― ハラスメントカウンセラーとして活動されることになったきっかけは?

最初に手がけた思い出のステンドグラス】
今の仕事をする前は、ステンドグラスの輸入・販売の仕事をしていました。大好きな仕事でしたが、人間関係のトラブルから、私がストーカー被害にあってしまったのです。会社に乗り込んできて、物を投げる、壊す、電話線を引きちぎるなど、もう仕事どころではなくなってしまって。。その時、警察に相談に行ったり、弁護士に中に入ってもらったりもしたのですが、どうにもならず、お金でも法律でも解決できない状況だったのです。それまでは、困ったことがあると、警察や弁護士など、ある種、公的な役割の方にSOSを求めていたのですが、もしかしたら民間でもそういうところがあるのではないか?と、探したんです。そして、ボディガードをしている方と出会い、2,3週間、会社と私にボディガードをつけてもらったんですね。私のために付き添ってくれたり、相手が来たら追い返してくれる、その安心感というのが本当にありがたかったのです。最終的には、ボディガードをしてくださった方が、中に入って相手を説得してくれて、私はようやくストーカーから解放されました。その時、「これからは、私と同じように困っている人を助けるような仕事をやりたい」と思ったのです。
―― ストーカーの被害に遭ったことが動機になったのですね。
実は、私ね、子供の頃、いじめられっ子だったんですよ。幼稚園に入った頃から小学校4年生くらいまで、よくいじめられて、「誰も、私を助けてくれない。。」と思った記憶があります。その辛い思い出が大人になっても残っていて、ストーカー被害にあった時に、「また誰も、私を助けてくれない。警察も助けてくれない。」と思ったのです。だから、お金を払ってでも、誰かが自分を助けてくれたことが、とても嬉しかったんですね。それで、「誰かが私と同じようなことで困っているなら、今度は私が力になりたい」と、そちらに自分の気持ちを全て向けることにしたのです。
―― 自分が経験した辛さを味わって欲しくない、という気持ちでしょうか?
そうですね。被害にあっている時に思ったのは、「誰でもいいから、私の代わりに相手に会ってくれないだろうか?」ということでした。四六時中、電話がかかってくるので、休む時間もありませんでしたから。。ですから今の仕事を始めて、被害者を守るためには、まず加害者と会わなければ、と思ったのです。相手に会って、「そんなことは止めなさい!」と、言ってあげたかったんですね。
―― それで、加害者と会うようになったのですね。
はい。それで、加害者と会って話しをするようになって驚いたことがあるのです。私は被害者の怒りを胸にして、この仕事を始めたわけですが、加害者と言われる人たちの話を聞いているうちに、彼らに共感している自分がいることに気がついたのです。これはどういうことかというと、学生時代に結婚するつもりだった彼に大失恋をした時のことを思い出したんですよ。あの頃、別れた彼が、私の友達と付き合い始めたことを知った時、本当に苦しくて、どうしても彼に戻ってきてもらいたくて、執拗に彼を追いかけたことがあるんです。今で言うストーカーですよ。
―― 小早川さんがストーカーになっていたのですか?
彼と付き合っていた頃、私は人間依存になっていたんですね。私は幼い頃に母を失っているので、人肌というのに触れていた期間が短かかったから、初めて彼に触ってもらった時の感覚が忘れられなくて。それで執拗に彼を追いかけたのです。あの頃、私が言っていた「納得できない」とか「責任を取れ」といった言葉を、会いに行った加害者たちも言っていることに気がつきました。その時、「この人たちは、私と同じ苦しみを味わっているんだ」と思ったのです。「”やめなさい”と、言葉で言うのは簡単だけれど、それだけではダメで、この人たちは心が救われなければいけないんだ」と気づいたんですね。それ以来、”加害者対応”ではなく、”加害者ケア”という言い方をするようになりました。加害者の心を救いたい、という気持ちで接するようになりましたね。そう考えると、被害者・加害者、両方の経験があるから、今の仕事をやれているのかな、と思います。
―― 加害者と会うということは、危険が伴うこともあると思うのですが。

そうですね。加害者が事務所で暴れたり、お茶をかけられたり、物を壊されたりしたことはあります。納得がいかないから、腹立ち紛れに物を壊すのですよね。警察に来てもらうこともよくあります。一番すごかったのは、親子間のいざこざの対応をしていた時、月に1回、ホテルの1室を借りて話し合いの場を設けていた時があるのですが、ある日、白手袋をはめてやってきたかと思うと、カバンから包丁を取り出して。あの時は死ぬかと思いました。でも、その日は、たまたま男性スタッフを連れていたので、彼がうまく対処してくれて、無事でしたけれど。
―― そういう怖い想いをされても、それでも今の活動を続けておられる、
その根底にある想いは、何なのでしょう?
自分が絶望感を知っているからかもしれません。子どもの頃、いじめられた時、深い井戸の中に取り残されたみたいな絶望感を体験しました。そういう子ども時代の想いがあるので、何か問題に直面すると、「やっぱり誰も救ってくれない」と感じてきたこと、それが嫌なんですね。困っている人が、その時の私のような絶望感を感じてしまうのが、嫌なんです。「そうじゃないよ。救ってくれる人はいるし、あなたも救われるんだよ。」って言いたいのです。
―― ご自分が体験した絶望感を誰にも味わって欲しくないという想いなんですね。
そうですね。そういう困っている人が救われる場面が見たいんですよね。誰かが誰かを救っている場面を、私が見たいのです。私が過去に救われなかったから。でも、なかなかそういう場面に遭遇できませんから、私が自分でやって自分で見ている。それをすることで、実は、私自身、癒されているんです。子どもの頃の”やり残し感”、”未完了な想い”、というのを、人は皆、それぞれ持っているわけですが、例えば、ストーカーだったら、子どもの頃、母親に褒められたかったけど褒められなかった、愛されたかったけれど愛されなかった、という、満たされていない想いがあって、その想いを、成人してから恋人に投影して求めています。それと私も同じなんです。人に助けてもらいたかったけれど助けてもらえなかった。その”未完了な想い”を、今、投影して求めていて、助けることでその想いが満たされて、過去の心の傷が癒される。そんな感じでしょうか。
―― 過去の心の傷を癒すことに繋がっているんですね。
加害者を救う、とういうのも、これとよく似ていて、ストーカーに限らないんですが、うつ病になっていたり、人間不信になっていたり、そういった心の病ってあるでしょう?リストカットしたり、依存症になったりする方が相談に来られますが、やっぱり、セラピーをしていると、過去の心の傷が救われていないんですよね。親や友達との人間関係が悪かったり、いじめられていたり。そこに焦点を当てて、救っていくのです。ただ、過去の人たちは、今ここにいるわけではないので、非常にメンタルな話になりますが、イメージの中で大人になった自分が過去の自分に会いにいって救ってあげる、というセラピーはよく使います。これによって、過去の心の傷が癒されて、少し楽になるんですよね。
―― 奥深いお話ですね。このような心の問題は、子どものいじめにも
繋がっているように思いますが、そのあたりはどう思われますか?
「いじめは劣等感の裏返し」などと本には書いてありますけれど、もう少し、積極的なものではないかと私は思っています。私は、これは人間特有のサディズムだと思います。人をいじめるのが楽しく感じるような残酷な面があるのではないかと。特に子どもはそれを抑えることができないので、素直にそれを出してしまうのだと思います。サディズムを抑えようとする努力というのは、教育の一つだと私は思っています。「たとえ、楽しいと感じてもやらない」、「したいことでも止める」というのを教えていくこと。例えば、万引きや痴漢のように、人間にはそういうことをしたい欲求はどこかにあると思うんですよ。でも、それをしない自分が好き、という、新たな価値観を体得させていく、というのは、とても大切な教育だと思います。
―― 人の中にあるサディズムを抑えるための教育、本当に必要ですよね。
最後に、今、心が苦しいと感じている人たちへ何かメッセージをお願いします。

人間は、皆、弱いですから、苦しいのは、普通のことなんですよ。だから、自分が苦しいと感じる相手がいる時は、なるべく率直に相手と話し合うなどして心のわだかまりを取る努力をしましょう。難しいときは誰かに中に入っていただくこともできます。それでも関係が改善しないようならば、その相手から離れることです。けれどそこを離れたくない、なぜなら自分はそこで勉強をしたい、あるいは働きたい、などという理由があり、苦しくても、その人の傍にいる選択をするのであれば、そこで生じる感情の処理は自分でしましょう、ということです。自分の感情を相手に処理してもらおうと思わないことです。感情の処理の仕方は、実はいろいろあるんですよ。例えば、腹が立ってしょうがなかったら、堪忍袋をもう一つ増やそう、と自分で思うとか。それだけでも、許容量が倍になるでしょう?他には、嫌な思い出が頭をよぎって、どうしようもない、というのだったら、この思い出を箱の中にいれて、この棚にしまっておこう、というイメージをするなど。要するに、感情の処理というのは、工夫でいくらでもできるはずなんですね。こういった感情の処理の仕方のアイデアなどは、今後、ブログなどでも紹介していきたいと思います。心が苦しいと感じるのも、自分が持っている感情なんだ、と思って、その感情をいかに自分で処理するかを真剣に考えましょう。自分の感情を自分で処理できるのが、本当の意味で大人なのだと思います。
―― 自分で自分の感情の処理ができるのが、本当の大人なんですね。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。
子どもの頃、知らず知らずのうちに傷ついた心は、大人になってからの人格に大きく影響するのだと感じました。でも、その心の傷も、セラピーを受けたりすることで、癒されて回復していくことを知りました。誰かの言動により、怒りや悲しみなどの感情が出てきたとき、その感情を自分で処理することができる人が、本当の意味での大人なのですね。なかなか難しいですが、これからは意識して、自分の感情は自分で処理をするようにしたいと思いました。
やさしく穏やかな小早川さんの瞳の奥に、”過去の自分と同じように苦しんでいる人たちを助けてあげたい”という深い愛情と熱い想いを感じました。お話を伺いながら、癒された気がします。たくさんの気づきをいただき、ありがとうございました!
by ニフティ「想い伝え隊」大空
小早川明子さんからのメッセージ
小早川明子さんからの動画メッセージ |
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