ストーカーやDV、セクハラ、いじめなどのハラスメント(嫌がらせ)問題や、ひきこもり、精神的人格的問題を抱えている方の様々なトラブルを解決し、ひとりひとりが豊かな人間関係を持つ手助けをすることを目的に、NPOヒューマニティを設立。現在、理事および代表カウンセラーとして幅広く活躍されている小早川明子さんにストーカーの心理や実態についてお話を伺いました。
―― ハラスメントカウンセラーとは、どのようなお仕事なのでしょうか?
ストーカーやセクハラなどのハラスメント問題で困っている方の悩みやトラブルをお聞きし、解決に導いていく仕事です。NPOヒューマニティという組織を設立して、弁護士や警察、病院などと連携し、被害者の心のケアと同時に、加害行為を行う側への接触、カウンセリングなども行っています。
―― ストーカーなどハラスメントに関する相談はどれくらい来ていますか?
この活動を始めて10年くらいになるんですが、これまでに800件くらいこなしてきました。1週間に1回くらい新規のご相談が入りまして、解決までに1,2カ月~3カ月くらいかかりますので、私がいつも5,6件、案件を抱えているという感じです。比率で言うと、ストーカーが4割くらい、パワハラが2,3割、セクハラも2,3割、残りがその他のご相談ですね。
―― 10年間で、相談の数や内容の変化などは感じられますか?
相談の数はほとんど変わらないんですよ。増えもしないし、減りもしない。要するに、精神的な暴力というのは、一過性の問題ではなく社会現象になっているのではないかと感じます。相談内容に関しては、最初のうちは女性被害者からの相談が多かったですが、最近は、男性の被害者や、加害者の方、加害者の家族の方からの相談がとても増えています。
―― 加害者の方は、自分が加害者だという意識があって相談に
来られるのでしょうか?
今まで、自分では意識していなかったのが、相手から警察に訴えられたり、警告されてしまったり、相手の弁護士から内容証明をもらってしまったなどで、「自分はストーカーなんだろうか?」という相談ですね。あとは、加害者の家族から、逮捕された日に電話が入ることもあります。
―― 被害者だけでなく、加害者やその家族から相談が来るというのは
珍しいように思うのですが、どういうことなのでしょうか?

私のところでは、司法と医療の狭間に取り残されてしまっている加害者のケアも行うようにしているんです。ストーカーやセクハラ、思春期暴力と言って、家の中で暴れたりするなど、手に負えない人たちがいますよね。タイプは違いますが、こういう方々は、恋愛依存とか人間依存など、心理的な問題を抱えているので、相手を困らせるような行動をとってしまうわけですが、中には、心理的な問題というよりも、もう少し深い、病理を抱えている方々もいるんですよね。
―― 本当の病気、ということですか?
精神の病理です。妄想性障害や統合失調症などです。しかし、ハラスメントの加害者の多くは、これら狭義の精神病とウツや心身症などの広義の精神病のハザマにいるといわれているボーダーライン、人格障害などのいわゆる性格のゆがみ、常識が受け入れられないとか、切れやすいといった、そういうタイプの人たちが多いんですよね。そういった方は、例えば、警察に相談に行っても、「病院マターでしょ?」と言われるんです。それで病院に連れて行くと、今度は、「人格障害、心のゆがみは病気ではありません。事件なんだから、警察マターでしょ?」と言われてしまう。要するに、司法と医療の狭間に落ちてしまって、誰も触らない人たちがいるんですね。だから、ストーカー事件も殴ったり傷つけたり、かなりひどいものになってくれば、警察も動いてくれるんだけど、そうじゃなくて、手は出さないけれどネチネチいじめたり、言葉の暴力とか、盗み見したり、悪口を言ったり、そういった精神的な暴力については、対応をするシステムも場所もなく、人もいないんです。だから、これは、うちがやらなくてはならない分野だと思って、やっているんですよね。
―― なるほど。では次に、相談が来てから解決に導くまで、どのような
プロセスで問題を解決するのか、教えていただけますか?
まず、被害者が相談に来た場合ですが、緊急に身の危険が迫っているような場合は、ボディガードをつけたり、いっしょに警察に行くなどの対応をとりますが、そうでない場合は、加害者からもお話を聞くためにお会いするようにしています。8割くらいの加害者といわれる方が喜んで会ってくれますね。ストーカーの場合、以前付き合っていた相手への加害行為というのが多いので、完全に縁が切れたとは思っていないんです。でも捨てられた格好になっているので、苦しくてしょうがない。でも相手は話に応じてくれない。だから、執拗に電話をしたり、頭にきて怒鳴ったり、変なメールを出したりなど、そういう行動になっている。要は、苦しいわけですね。だから、「私が話を聞きますよ、相手との話の中間に立ちますよ」と言うと、喜んで会ってくれるんです。
―― とても勇気のいる行動ですね。
それで、お話を聞きながら、「相手はあなたが怖いんだから、嫌なんだから、直接連絡したり、ストーカー行為をするのはやめてくださいね。でも必ず私が間に立って意思疎通の役割をいたします。」とお願いします。そして、ストーカー行為や直接連絡したりすることだけはやめる約束をしてもらうんですね。すると、すぐにストーカー行為はやめてくれる場合が多いのです。「ひょっとしたら、相手が戻ってきてくれるのではないか」という希望が見えるので。しかし、ストーカー行為をやめているだけではストーカー的な心理を捨てられたわけではまったくありません。再発の恐れは常にあります。そこで、約束どおり何度も、彼・彼女の言いたいことを私が聞いてお伝えし、返事をもらう、というやり取りを繰り返すのです。その間、加害者と何回も話をしますので、少しずつ、常識的なことを話して浸透させていくんですよ。「それは、婚約不履行じゃないよ」とか、「そこまでしたら、住居侵入だよ」など。すると、だんだん聞く耳ができてきて、「自分は違法なことをしているんだね。相手は迷惑なんだね。もう帰ってこないんだね。」ということがわかってくるんです。そして最終的に、「でも、この心の苦しさはどうしたらいいの?」ということに気づくわけですね。
―― 加害者は悪いことをしていたことを意識できるようになるけれど、
心の苦しさは消えていないことに気づくのですね。

はい。これが最後に残る”核心部分”なんです。そこからは、一対一のしっかりした心理療法をするんですね。カウンセリングというよりも、セラピーの領域に入っていきます。それで、納得・完了ができたときに、安心・安全のために、もう二度と連絡を取りません、といった謝罪文を書いてもらったり、あるいは、被害者が応じれば、最後に3人で会わせて、きれいな別れ方を印象付けるんですね。これは理想的なやり方で、セラピーをしても、なかなか我慢できない人もいます。そして結局、警察に捕まってしまった人もいます。でも、そういった方とは、数年間お付き合いをしながら、なんとか立ち直ってもらうようにしています。だから、被害者とは縁が切れるのが早いんですけど、加害者とは、ずっと続いちゃうんですよ。今、抱えている案件は5件、でも、常に連絡を取り合っている過去の加害者と言われる人たちは十何人もいるんですよね。
―― ストーカーの被害者や加害者になりやすい人は、いるのでしょうか?
そうですね。被害に遭いやすいタイプというのはあるような気がします。うちに来たときは、本当に疲れきって弱々しいのだけれど、回復したときに見る姿は、結構強い方が多いですね。姉御肌というか。自信満々で人の面倒見がよいんですよね。逆に、ストーカーする人は、実は弱い人なんですよね。誰かにすがっていかなければ生きていけない心の弱さを持っているんですよ。だから、強くて情にもろくて、何でも自分の責任だと感じてくれるような、そういったパートナーを求めているんですね。被害に遭いやすい人は、最初は「私に頼ってくれるのか。よし、わかったよ。」という感じで、お付き合いが始まるわけですが、半年くらい経ってみると、ストーカー特有の支配欲や、ちょっとした意地の悪さなどが表に出てくるわけですね。そうなると、被害者側の人は、持ち前の情の深さから、「こういうふうにこの人を変えてしまったのは、私のせいかもしれない。なんとか、相手を立ち直らせなければ・・・」と思って、深みにはまっていくのです。そういう関係が、だんだん支配・被支配に置き換わっていくんですね。そして、気が付いたら、もうボロボロになっていて。そこまでいって、私のところに相談に来るんですよね。
―― ストーカーが出てきた背景にはどんなことがあると思いますか?
ひたすら愛情不足ですね。子どもの頃から大人になるまで、愛情の貯金がないので、カツカツなんですよ。飢えているんです。カツカツのときに、自分を愛してくれる人と出会ってしまうと手放せないでしょう。例えば、100円貯金を持っていた人が20円取られても、まだ安心していられるけれど、10円しか貯金がない人が20円取られたら、我慢ならないじゃないですか。それくらい、愛情が不足してると感じます。本当の愛情というのがなくて、「これこれをしてくれたら愛してあげるよ」のような育てられ方をしていると、「じゃあ、がんばれば、愛してもらえるかもしれない」と思って、いっぱい課題をこなして大人になっているわけです。学歴が高かったり、一流企業の社員だったりするのですが、だから、「なんで、こんなにがんばってきたのに報われないのか、なんで捨てられたのか?」と、納得できないんですね。「人生には努力したって叶わないこともいっぱいあるんだよ、愛もその一つなんだよ」ということが理解できない。愛情不足と余裕のなさです。それから、何でも物が溢れている時代に、持っていないと不安なんですね。服でも靴でも、恋人も、ですよ。だから、いい恋愛をしていないことに対する劣等感も強くて、「恋人がいないと、自分はおかしいんじゃないか」という気持ちになったり、人から別れを告げられたり、離婚したりすると、自分に”ダメ出し”されたような気になってしまうんですね。要するに、自分に自信がないのです。「自分の人生は、たとえどんな人生でも自分が作ってきたものだから、デコボコしていていてもいいし、自分は自分なんだから!」という自信がないんですよ。(後編に続く)
被害者のほうが強くて、ストーカーをする人は実は心が弱い人が多いというのは意外でした。愛情不足の中で育ち、自信がなく、でもそれを認めたくはない。そして、一度手に入れた愛を失うのが怖くて、相手が嫌がる行為をしてしまうストーカーと呼ばれる人たち。ストーカーを生み出したのは、親の期待を一身に受けて、「受験戦争で勝ち抜いていかなければ、自分は愛されない」と感じて育った人たちを生んだ、社会的背景もあるのではないかと感じました。
それにしても、ストーカーやハラスメントの加害者の人と実際に会って話をするということは、本当に勇気のいることだと思います。被害者だけでなく、加害者の心も理解されようとなさっている小早川さんの深い愛情をお話の中から感じました。
【次回予告】
小早川さんのインタビュー(後編)では、小早川さんがステンドグラスの輸入販売という華やかな仕事を辞めて、カウンセラーとして活動されることになったきっかけや、加害者の心のケアに込められた想い、それから、学校におけるいじめ問題などについてもお話を伺います。どうぞお楽しみに!
by ニフティ「想い伝え隊」大空
NPOヒューマニティの紹介
NPOヒューマニティでは、個人の心の中にある苦しい問題を自身で乗り越えていくお手伝いはもちろんのこと、自身で抱えきれなくなった様々なトラブルの解決を手助けしています。
著書の紹介
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ブログの紹介
小早川明子さんのブログでは、実際に起こったストーカーなどの事件の事例や、その時の人の心の状態などについて、詳しく紹介されています。是非、こちら( 小早川明子の「ステインドな日々」 )もご覧ください。
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