世の中での自分自身の役割は仕組みをつくること、と言われる田中優さん。
インタビュー後編では、おカネと環境破壊、戦争とのつながり、そして新たな発想で始められた活動についてお話を伺いました。
前編では、ちょっとした工夫や知識で省エネルギーに効果のあるお話を伺いました。さらに私たちにできることはありますか?
次のステップは、小さくなった消費電力を何でまかなうか?を考えることが重要です。そこで導入するのが自然エネルギーです。消費の器があるとしたら、その器自体を小さくして、そこに自然エネルギーを入れていくという順序でなければならないんです。つまり、省エネが先で、その後に自然エネルギーの順序で対策をとらなければならない訳です。
ありがとうございます。さて、田中さんは未来バンク理事長を務められておられますが、未来バンクの設立の経緯などについてお教えください。
はい。未来バンクを作るとき、日本で私たちが預けたおカネがどこにどう使われているのか、金融機関の融資先を調べてみました。例えば郵貯を例にとると、あちこちのダムのほとんどに郵貯のおカネが利用されていました。ほかにも、高速道路、空港、リゾート開発やスーパー林道などの資金源にもなっていたんです。私たちは郵便貯金は良いことと思って貯金をしてきた。ところが不幸なことに、いくらいいことをやろうと思って貯金をしても、実際には私たちが頭で思い描いたことが現実にはならない訳ですね。私たちの未来は、どこにおカネを預けたかによって決まってしまうのです。
預けたおカネがどのように使われるかは、普段はあまり気にしないところですよね。

そうですね。当然のことですが金融機関は潤っている産業に融資します。そして今の世界の中で、史上最大の利益を記録しているのが軍需産業と石油産業です。特に軍需産業の収益率は最大なので、そこに投資する金融機関が多いのは事実です。ところが、軍需産業に投資するということは、人を殺す手助けをしてしまうんです。例えば、今世界で一番子供を殺しているクラスター爆弾という兵器があります。これは1個ずつ小さなパラシュートで落ちてきて、地表で爆発して、半径500メートル以内に金属片を飛び散らして人間を殺傷する爆弾です。この不発弾による被害者のほとんどが民間人、そしてその3割が子供なんです。
融資している金融機関はそのような現実を知っているのでしょうか?
いや、知らないから軍需産業に融資をしているんでしょう。世界の中で子供を殺してまで金を儲けたいと思っている企業は少ないでしょう。融資する金融機関もそこにおカネを預ける私たちも結果的には殺人に加担してしまっているんです。企業がCSRをうたって、道路のわきのゴミを拾うのもいいけど、その一方で世界中の子供を殺していたら社会貢献の意味は何なのかと思います。ベルギー政府は国会で決議して軍需産業に融資してはいけないことを決めました。フランスではNGOが騒ぐので融資しなくなりました。私たち自身もそのような金融機関におカネを預けながら、環境破壊をやめようとか、人権侵害をやめようとか言っていると「限りないモグラたたきゲーム」をやることになるんです。本当に不幸なことです。
そのあたりが未来バンク設立の原点ですね。
はい。未来をあまり考えない金融機関に従来どおりおカネを預け続けるというのはまずいのではないか、というのが未来バンク設立の発端です。市民がおカネを出し合って貸出先を決め、その情報を開示して、地域で目に見えるおカネの流れを作る仕組みを考えました。未来バンクを14年前に設立したころは、「そんなばかげたことを考えても無駄だよ」と言われてました。しかしながら、10年ほどたったころに未来バンクの考え方がようやく主流になっていたんです。このようなNPOバンクは全国で既に9団体ほど設立されて、ますます全国各地に広がっています。そのポリシーは、「いかに儲かるか」ではなく、「いかに社会の役に立つか」という発想です。いまや企業もCSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)を主張しなければ生きていけなくなっています。やっと時代が追いついてきてくれたんです。
「未来バンク」は、まさに未来を先取りされたということですね。すごいことだと思います。さて、田中さんは最近、新しい活動を始められたとお聞きしましたが?

先日「天然住宅」という非営利の住宅の会社を立ち上げました。ここは、まさに99.9%天然素材の木材をふんだんに使って、300年住める家を作っていきます。通常、木造住宅はベニヤ板や集成材などチップを集めたような材料で建てられるので、家一軒あたりドラム缶約一本分の接着剤を使っていますが天然住宅では接着剤は一切使いません。また、木材を山側で加工することで住宅費用の多くの部分を山側に届く仕組みにしています。まず山で木を切り、すぐに燻煙乾燥(木炭を作るときのように木を煙でいぶす)します。木の中に煙が入ることで、虫が食わず、カビも生えず、ぬれてもすぐに乾く木材ができます。さらに自然乾燥させて組み立てるだけの状態に加工します。それを都市圏にトレーラーで一気に運び、プラモデルを作るように組み立てるのです。建築の工期が極めて短いので経費も少ない。山側の作業が多いので山側にお金を払うことができる、しかも、山の木を使うことで、次につながる植林ができるんです。この循環を成り立たせることも天然住宅の目的のひとつなんです。
これも発想の転換ですね。
日本人男性は、家一軒とバーター取引と言えるほど家のローンに追われる生涯を過ごします。でも300年住むことができる住宅を作れば、そんな厳しい生活をしなくても済む。ヨーロッパでは、収入が少ない人も豊かな暮らしをしています。それは、数百年も前に建てられた建物にいまだに住んでいるからなんです。家は自分の一生を超えると社会資産になる。社会資産になるような住宅を提供できる仕組みを作っていければと思い「天然住宅」を設立した訳です。
いろいろなものが循環していく仕組みですね。

そうです。300年も長持ちして、健康に暮らすことができて、森も守ることができる。そういう新しい仕組みを作って、すぐに取り組んでいかなければ温暖化防止は間に合わないと思います。そして、今回、天然住宅を非営利でやったのはこの仕組みを広げたいという思いからなのです。営利というのは仕組みを利益の源泉にするので隠さなければいけない。でも、こんなすばらしい仕組みを隠していたら温暖化防止が間に合わなくなるので、誰でもいいからきちんと学んで、真似して広めてほしいのです。だから私たちはそういう情報を隠す気はなく、すべてガラス張りにしてます。
天然住宅、いいですね。この住宅も省エネ家電のように得をしながら建てることはできないのでしょうか?

こんなにすごい住宅ですが、無駄なコストを削減していったら、いま時点の坪単価で言うと、一番高いハウスメーカーと同じくらいの価格にまで抑えることができました。しかも、エコ住宅なので光熱水費は通常の住宅と比較して約半分です。まだまだ普通の住宅を建てるより高いですが、ローンに乗せてみると高くかかった分が光熱水費の減少分で相殺されて普通の家と同じかもしくは安くできる可能性があります。ですからここでも住宅専門のバンクを作って低利で融資しようと考えてます。更に、この仕組みを成り立たせるには光熱水費を抑えなければならない。すなわち省エネの製品を入れてもらうことが重要なんです。天然住宅に住むとき、指定した家電製品を入れてくれたら低利の融資で優遇することも考えています。つまり冷蔵庫と同じように得をする融資の仕組みが適用できるようになります。
環境のために、私たちにできることが見えてきました。
本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。講演や出版だけでなく、こうやってインターネットを活用することで、僕の活動も広く伝えられるようになりました。インターネットの可能性はものすごく大きい。今はまだその可能性がちょっと芽吹いた時点です。この先にはもっとすごい時代が起こるのではないかと思っています。
そして、この世の中では新しい仕組みを作って行くことが僕の使命だと思っています。これからも、環境にも人間にもやさしい、いろいろなものが循環していく仕組みを作って、多くの人たちに伝えていきたいと思っています。
自分が預けたお金が、人を殺すための爆弾を作るために使われているとしたら・・・そんな恐ろしいことは、絶対にあってほしくないと思います。田中さんのお話を伺い、私たちがどのようにお金を使っているか、ということが、私たちの未来を創っていくのだとあらためて実感しました。
どこにお金を預けるか、何にお金を使うのか、空輸の必要のない国産の食べ物を買ったり、省エネタイプの家電製品を使うことなど、私たちの環境活動は、そんなところからでもすぐに始められるのではないかと思いました。それが、本当の意味でのエコロジーな生活につながると感じている「想い伝え隊」です。
by ニフティ「想い伝え隊」小谷、浦田
田中優さんより
田中優さんからの動画メッセージ |
天然住宅について天然住宅は、こちら( 「非営利中間法人 天然住宅」 )よりご覧いただけます。 日本国際ボランティアセンターについて日本国際ボランティアセンターは、こちら( 「特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター」 )よりご覧いただけます。 |
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