田中優さんは、早くからライフワークとして環境問題や平和問題に取り組まれてきました。現在「未来バンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」「足温ネット」理事、「ap bank」監事、中間法人 天然住宅の副代表を兼任され、立教大学、和光大学、大東文化大学などの講師も務めておられます。全国各地で年に200回以上の講演をエネルギッシュに展開し、日本のアル・ゴアとも称される田中さんに最新の活動状況やその想いについてお話を伺いました。
田中さんは最近、南極へ行かれたということですが?

はい、今年の3月にアルゼンチンから船で7日がかりで行ってきました。行った場所は南極半島です。南極へ船で行くには、世界に5人しか居ないアイスパイロットという船長の上につく船長をつけなければならないんです。今回は南極に1000回以上も行っている高齢のアイスパイロットが同行してくれました。その彼に「氷は溶けているか?」と聞くと、「ものすごく溶けている。以前は氷山にぶつかる危険があって、こんな大型客船は入れなかったが、今は楽ちんなもんだ。これも温暖化のおかげなんだ。もう手遅れだね。」と言ってました。
田中さんの目からも南極の温暖化は進んでいると思われましたか?

僕は南極は初めてなので昔との比較はできませんが、世界でもっとも南極経験のあるアイスパイロットの言葉を借りると、「とんでもなく地球温暖化が進んでいる」というのが現状のようです。たしかにあちこちに黒々した大陸が見えていましたし、崩れつつある氷の大地も目の当たりにしました。200年前に探検家が始めて南極に行ったときは、なにもかも真っ白で「どうも大陸があるらしい」と言っていたそうですが、今なら即決で「陸があります」と答えるでしょうね。南極は人が住んでいる地域と違って、なかなか客観的なデータがとれないのですが、南極半島の衛星写真を調べると、この10年間に氷が融けて流出した量が2.4倍増えたというデータがあります。アイスパイロットに「今、人類は地球温暖化防止に向けて動いているが、それについてどう思うか?」と聞いたら
「It's only peanuts」(ピーナッツごときのものだ)言われてしまいました。
手遅れとかピーナッツとか、手厳しいですね。田中さんはどう思われますか?
僕自身は、考え方の中で客観と主観はごっちゃにしないで考えることにしているので、客観的には非常に厳しいと思います。ただ、主観的には、まだ間に合う余地はあるので、とにかく早い時点で、日本を含めた全世界がものすごい方向転換をしていかなければと思っています。
方向転換とはどのようなことなのでしょうか?
日本以外ではもう始まってます。例えば、ノルウェーでは与野党合意の上で2030年に「CO2」をゼロにすると言っているし、オーストラリアも政権が変わって以来、京都議定書を批准すると言っている。アメリカですら次期大統領候補の全員が京都議定書を支持すると言っています。一方で日本はどうかというと、かなり遅れているような気がする。地球温暖化の原因としての「CO2」懐疑説を言う人もいっぱいいるし、まだまだ本気でいない人が大勢居ます。もう学術論議をしている時間は無いんです。諸外国では基本的に環境問題は「ノー・リグレット・ポリシー(no regret policy)」というのが基準になってます。
ノー・リグレット・ポリシーですか?
はい、後悔しない政策ということです。諸外国、特にヨーロッパではノー・リグレット・ポリシーで考えて、地球温暖化の原因がはっきりしない時点でもきちんと対策を採っているんです。どうやら「CO2」が疑わしい、でも、もしかしたら誤差があるかもしれないし、間違っているかもしれない。だけど何も手を打たないまま時間が経ってしまい「CO2」が本当に原因だったらどうしますか?アウトです。「CO2」に少しでも可能性があれば止めるほかない。これはあたり前の話ですね。その意味で、諸外国レベルで考えると日本は非常に対応が遅れている。他の国は本気で動こうとしているんです。いずれ世界中が進んだときに、日本はなんで遅れているんだと非難を浴びることになります。今、まさにそういう状況になろうとしています。早く日本が本気になって欲しい。主観的にはまだ間に合う。問題はそれをどう進めるかなのです。
後悔しないために、私たちがやるべきことは?
まず省エネですね。省エネは「熱」と「電気」に分けて考えます。熱の省エネの「断熱」は、身近なものを使って大きな効果が得られます。例えば、アルミサッシの内側に“プチプチ(気泡の緩衝材)”を貼るとか、裾の長いカーテンをぶらさげる。たったそれだけのことで省エネに大きな効果があります。もうひとつは「電気」。電気はもっと簡単なんです。実はこの10年ほどで電化製品の省エネ化がものすごく進んでいます。家電を買い替えなければならないとき、きちんと省エネ製品を選ぶだけで電力消費を半分まで落とすことができます。買い替えるときは省エネ製品を選ぶこと。これが大事なんです。
どのような電化製品を買い替えると効果がありますか?

電力消費の四天王と呼ばれる電化製品があります。四天王とは、エアコン、冷蔵庫、照明、テレビの4品目。その電化製品だけで家庭の電力消費の2/3が使われています。これらの電化製品を省エネのものに買い替えればいいんです。
四天王の中でも、特に冷蔵庫は24時間通電しっぱなしなので個人差がほとんどないんです。ですから冷蔵庫を最新のものに買い替えると、誰もが明らかに電力消費を減らせるんです。
でも買い替えると家計の負担が気になりますが・・・。
買い替えた方が明らかにメリットがあるならば、我々は融資をしようと考えたんです。例えば、最新の冷蔵庫と90年代の製品を比較すると、電気料金が毎年28,000円くらい安くなる。20,000円の5年分、10万円の融資を受ければ新品の冷蔵庫に買い替えられる。毎年28,000円を得する中から、20,000円ずつ5年間返してゆけばいい。そうすると、毎年8,000円ずつ得しながら5年で返済が終わって、その後は得するだけ。しかも冷蔵庫は12年使えるから残り7年間、年間28,000円ずつ得するので、約20万円得することになる。得しかしなくて、新品の冷蔵庫を手に入れて、エネルギー消費量をガクっと減らすことができる。というプランができる。そういうやり方で融資の仕組みを作ったんです。
おもしろい仕組みですね。
この融資の仕組みはほかにもいろいろなことに利用できるんです。例えば、蛍光灯ランプは、白熱球と比較すると消費電力が1/6。家庭であれば、通常5.5時間使われている。それを1年間白熱球を蛍光灯ランプに換えるとだいたい2,500円の電気料金が安くなる。蛍光灯ランプは一番安いもので600円ほどなので、おおよそ1/4年で取り戻すことができる。そうすると、この蛍光灯ランプを相手に届けて、4ヶ月後にお金を払って貰えばよい。その4ヶ月の間の電気料金で600円以上800円くらいが取り戻せるので、実質、タダになるんです。実は、白熱球は一般的な家庭だと、玄関の外と内側、廊下、階段、風呂、トイレと数えると6個も入っている。その6個の1個ずつに年間2,500円も得する仕組みが成り立ち、努力しなくても省エネができるんです。
なるほど、そういう考え方もあるんですね。
やはり選ぶ商品によって消費エネルギーや「CO2」排出量に差が出るのですね。
はい、そうなんです。実はフードマイレージというのがあって、最近イチゴについて調べてみたんです。店頭のイチゴには、海外から輸入と国内産のものがあります。輸入のイチゴは100グラム(たった10粒)なのに、1.3キログラムの「CO2」を出しているんです。つまり、重さの13倍の「CO2」を排出している。馬鹿げた話ですよ。国内産のものを選ぶだけで1.3キログラムの「CO2」を削減できるんです。だから家庭で最も手軽にできる「CO2」の削減は「地産地消」なんです。テレビを1日1分短くしようとか努力忍耐するよりも、モノを買うとき、海外から輸入されているものを避けて、国産の近所で作ったものを買う。これだけで全く状況が変わってきます。選び方ひとつで変わるんです。つまり、お金を使って何を買うかというのは投票と同じことなんです。
なるほど。努力忍耐の省エネよりもちょっとした発想の転換で簡単に、しかも得をしながら温暖化防止ができるとは目からウロコです。商品を選ぶときにもその属性を見極めて、賢い判断をしなければと心に命じました。
【次回予告】
次回の田中さんのインタビューの後編では、地球環境とお金、戦争との関係や最近はじめられた新しい活動などについてお伺いします。
by ニフティ「想い伝え隊」小谷、浦田
田中さんの近著、「いますぐ考えよう!地球温暖化」シリーズ(岩崎書店)の3冊は、小学校中学年以上のお子様向けに、地球温暖化の仕組み、またその防止のための考え方や未来への取り組みなどがわかりやすく解説されています。
著書の紹介
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いますぐ考えよう! 地球温暖化1 「地球温暖化と自然環境 なぜおこる、なにがおこる」 |
価格:2,940円(税込) |
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いますぐ考えよう! 地球温暖化2 「地球温暖化と省エネルギー なにができる、なにがへらせる」 |
価格:2,940円(税込) |
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いますぐ考えよう! 地球温暖化3 「地球温暖化と自然エネルギー わたしたちの未来、みんなの地球」 |
価格:2,940円(税込) |
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「地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか」 |
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「戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方―エコとピースのオルタナティブ」 |
価格:1,470円(税込) |
ブログの紹介
田中優さんのブログは、こちら( 田中優の'持続する志' )よりご覧いただけます。
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5/1up: ニフティ動画に田中優、登場 [「天然住宅」ブログ。健康住宅+環境共生住宅+エコハウス+自然住宅+子育て住宅。]
@nifty ビデオ共有β に田中優が登場。 「天然住宅」のご紹介をさせていただいてます。感謝! 「田中優さん天然住宅のご紹介」のビデオpowered by @niftyビデオ共有 6/5 追記:コンテンツもアップされました!... [続きを読む]
受信: 2008年6月 5日 (木) 17時11分










コメント
冷蔵庫を最新のものに買い換えるだけで、省エネになって、しかも、電気代も安くなる、というのは、考えたことがありませんでした。今年で10年目の冷蔵庫を次のボーナスで買い換えるきっかけになりそうです。地球のために、未来のために、自分にできることを少しずつでも実行していきたいと思いました。
投稿: 省エネっ子 | 2008年4月26日 (土) 17時53分